主張

沖縄負担軽減大臣

どこまで県民を愚弄するのか

 安倍晋三首相は、改造内閣の目玉の一つとして、「沖縄基地負担軽減担当大臣」を新設し、菅義偉官房長官に兼務させることにしました。菅氏は「沖縄の皆さんに寄り添う気持ちが少なすぎた反省の上に立って、内閣全体として(沖縄の基地負担軽減へ)できることは全て行う」(3日の記者会見)と言いました。しかし、実際の安倍内閣の行動は、「寄り添う気持ち」や「反省」とは正反対です。最新鋭の巨大基地を力ずくで押し付けようとしておいて、看板だけの「負担軽減相」とは、沖縄県民をあまりにも愚(ぐ)弄(ろう)した態度です。

怒りの火に油注ぐ

 「負担軽減相」の新設は、県民の新たな怒りを呼んでいます。

 「移設作業の旗振り役となっている菅義偉官房長官に『沖縄基地負担軽減担当』を与えたことは重大だ。悪い冗談だと言いたくなる」(4日付琉球新報)「11月の知事選を意識した、とってつけたようなものにしか思えない」(同日付沖縄タイムス)

 安倍政権が米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古(へのこ)への「移設」=最新鋭の巨大基地建設のため、沖縄県民らの抗議行動を敵視し締め出して海底ボーリング(掘削)調査を強行している中、厳しい批判は当然です。

 地元紙などの県民世論調査(8月26日発表)は、「移設作業は中止すべきだ」が8割に上り、新基地建設反対は県民の絶対多数の声になっています。「新たな基地を造らずに普天間(基地)を閉鎖する方策に道筋をつけることが、県民の望む負担軽減の形」(4日付沖縄タイムス)にほかなりません。

 ところが、菅氏はこれまでの「反省」を口にした同じ記者会見で「(普天間問題解決の)最良の選択が辺野古への移設だと私どもは考えているので、昨年暮れに仲井真弘多(なかいまひろかず))知事からもらった埋め立て承認に基づいて粛々と行っていく」と述べ、県民の気持ちを踏みにじって新基地建設を強行する考えを示しました。これほど県民をばかにした態度はありません。安倍政権の強権路線が県民の怒りの火にいっそうの油を注ぐのは明らかです。

 菅氏が、新基地建設合理化のため「米軍基地はわが国にとっての抑止力」だと述べたことは重大です。普天間基地に代わり辺野古に建設が狙われている新基地は海兵隊の基地です。しかし、第1次安倍政権などで安全保障担当の内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏は最近の論考(『虚像の抑止力』所収)で、米国は中国との戦争を望んでおらず、海兵隊を含む地上兵力の投入という選択はあり得ないことなどを挙げ、沖縄の海兵隊は「抑止力」として意味がないと述べています。菅氏の主張に根拠はありません。柳沢氏が「普天間問題の本質的解決の道筋」は「海兵隊の米本土への移駐以外にない」と述べていることは重要です。

政権の危機感の表れ

 「負担軽減担当相」の新設は、新基地反対の県民の世論とたたかいに追い詰められた安倍政権の危機感の表れです。昨年、県内の全市町村長・議会議長らが普天間基地の閉鎖・撤去、「県内移設」断念などを求めて安倍首相に提出した「建白書」実現に向け、沖縄いっせい地方選とそれに続く県知事選で「新基地ノー」の県民の声を突きつけることが必要です。