原子力規制委員会が実施中の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の規制基準への適合性審査で、重大事故対策の有効性評価について、以前行われていたクロスチェック(異なる角度からの点検)解析が厳正に実施されていないことが13日までに分かりました。規制委が発表した資料(「技術報告」)で判明しました。規制委の審査がいかにずさんかを改めて示したもので、審査で適合とされたからといって、再稼働の条件とはなりえないことが浮き彫りになりました。
福島第1原発事故前の原発の設置(変更)許可に関する審査では、事故を想定した事業者の解析の妥当性を判断するため、旧原子力安全・保安院や旧原子力安全委員会が、事業者の提出した解析と同じ条件で、事業者の計算ソフト(コード)とは異なるコードを用いて独自の解析をしていました。
ところが規制委が作成した新たな規制基準によって、初めて炉心溶融を伴う重大事故(過酷事故)への対策が、事業者に義務付けられましたが、これまでのようなクロスチェックは実施されていません。
これに対し規制庁は「(これまで行われている)設計基準事故のチェックの仕方と、重大事故のチェックの仕方は、考え方が違っている」と認めました。
九電は川内原発の過酷事故に関する解析をMAAP(マープ)という米国製のコードで実施。それによると、最も過酷な場合の事故シナリオで、事故発生から約19分で炉心溶融が始まり、1・5時間で原子炉圧力容器が破損します。
九電は、事故発生の49分後から、格納容器内に水を張ることで、コンクリートと溶融燃料との反応で水素などが発生することを抑え、格納容器の破損を防げるとしています。しかし、過酷事故の解析コードには大きな不確かさがあると指摘されています。仮にこの1・5時間が半分になれば水張りは間に合わず、格納容器が破損する危険性があります。
元原子力安全委員会事務局技術参与で原発の審査にも関わった滝谷紘一さんは「リポート(技術報告)の内容は、申請者の解析の妥当性を審査したクロスチェック解析ではない」と指摘します。
滝谷さんは「事業者に、入力値を少し変えて『感度解析』を行わせるなどしていますが、それだけでは不十分です。コード自体にどれだけ不確かさがあるのかを見るには、少なくとも異なるコードで同じ条件で解析し、結果を付き合わせて検討する必要があります。それをしないままでは、ずさんな審査といえます」と強調します。
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