主張
「防衛計画大綱」
何のために何を見直すのか
2013年度予算案の決定を前に安倍晋三政権は、民主党政権が策定した「防衛計画の大綱」(大綱)の見直しと「中期防衛力整備計画」(中期防、11~15年度)の廃止を25日閣議決定しました。こんご新たな「大綱」と「中期防」策定の検討作業を行い、6月をめどに中間報告をめざします。
「大綱」と「中期防」が10年末に決まってわずか2年余りです。いったい何のために、何を見直すのか。民主党政権が決めたものだから気に食わない、昨年の総選挙で自衛隊の人員・装備・予算の「拡充」を公約したからだなどというのでは、あまりにお粗末です。
見直し理由示せない
「大綱」の「見直し」などを決めた閣議決定には、「我が国周辺の安全保障環境は、一層厳しさを増している」とか、米国が「同盟国との連携・協力の強化を指向している」などとあるだけで、何のために「大綱」を見直すのか、何を見直すのかの説明はまったくというほどありません。現在の「大綱」や「中期防」のどこが問題なのかの説明さえありません。これから見直して年内に「その結論を得る」というだけです。
「大綱」などの「見直し」は自民党が総選挙で公約したものですが、それは「変化する安全保障環境に適応する人員・予算の強化」という項目のなかです。「大綱」と「中期防」は日米軍事同盟強化と軍事増強のための計画書で、自衛隊を「動的防衛力」と位置づけ、日米の軍事協力を強化することをうたっています。しかし民主党政権が「大綱」を策定したさいには、人件費の「抑制」や自衛官の「2千人削減」を明記し、「中期防」は5年間で約23兆4千億円を軍事費総額の上限としていました。それをくつがえすために「大綱」を見直し「中期防」を廃止するというのでは、あまりに身勝手で道理がありません。
安倍政権が「大綱」見直しの閣議決定で並べ立てている口実も通用しないものばかりです。中国や北朝鮮との「安全保障環境」の変化を持ち出すのは、軍事力で事を構える「軍事対抗主義」です。日本とアジアに平和をもたらすどころか緊張を激化させます。安倍政権が過去の侵略戦争を反省もせず日米軍事同盟の強化と軍備拡張にふみだせば、日本への警戒心が強まり、日本がアジアと世界から孤立するのは明らかです。
米国のアジア戦略を持ち出して、米国が「同盟国等との連携・協力の強化を指向している」からというのはとんでもない対米追随です。自衛隊の増強は、海外で米軍とともに戦争する構えを強めることにしかなりません。戦争を放棄した憲法に違反する危険な企てはきっぱりやめるべきです。
軍事費は削減してこそ
防衛省はすでに12年度補正予算案で新たに2124億円を追加し、13年度予算案は1年限りの方針をつくって今年度より1200億円増やす方針です。これによって10年ぶりに軍事費の純増路線に回帰することになります。
財政危機を理由に社会保障費を削り、消費税の増税まで国民に押し付けながら、その一方で、むだな軍事費を増やすのは許されるはずがありません。軍事費を削って国民生活に回せと願う国民の要求にこたえて、軍事費を大幅に削減することこそ政治の務めです。
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