主張
中長期の財政試算
破たんのツケ 国民にまわすな
安倍晋三政権が閣議了解した来年度(2015年度)予算の概算要求基準と、内閣府が同時に経済財政諮問会議に示した中長期の経済財政試算は、怒りを通り越してあきれるほどのものです。概算要求基準では来年10月にも予定している消費税増税を見越して上限を示さず、100兆円台にも達するといわれます。その一方、中長期の試算では安倍政権が「国際公約」とまでいった20年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標をあっさり投げ捨て、11兆円もの赤字を見込んでいます。無責任な財政運営で破たんのツケを国民に押し付けるのは許されません。
黒字化目標投げ捨てる
日本の財政は、歳入の約4割を借金で賄い、公債の発行残高は約1000兆円と名目国内総生産(GDP)の2倍近くにのぼる異常な状態です。安倍政権も「中期財政計画」で、新たな借金をしなくてもその年の財政が賄える基礎的財政支出(プライマリーバランス=PB)の黒字化を目標に掲げ、PBのGDP比を15年度までに10年度にくらべて半減、20年度には黒字にするとしてきました。事実上の国際公約にするだけでなく、国民に消費税増税などを押し付ける口実にもしてきました。
ところが内閣府が示した中長期の経済財政試算では、実質2%の経済成長を見込んだ場合、PBのGDP比は15年度には3・2%と10年度の6・6%からほぼ半減するものの、20年度になっても黒字化せず、「更なる収支改善努力が必要」としています。不足額はGDPの1・8%、約11兆円です。
財政再建を理由に消費税増税などを押し付けてきた道理のなさは明らかです。公約には口をぬぐって財源不足は約11兆円などと平然と示してみせる試算からは、消費税の新たな増税など、赤字の穴埋めに国民にツケを押し付ける安倍政権の姿勢がありありです。
日本の異常な財政破たんの原因が、歴代政権がまともな見通しもないまま、大企業のための大型開発や軍事費の拡大を続けたことにあるのは明らかです。安倍政権も発足以来、「経済再生」の名で高速道路や大型港湾など大型開発予算の増額を続け、軍事費についても減り続けていたのを増額に転じさせたと自慢してきました。
来年度の概算要求基準でも、予算の上限を示さないだけでなく、政権が目玉にする「成長戦略」や来年のいっせい地方選を意識した地方対策のために、4兆円もの特別枠を認める大盤ぶるまいです。社会保障については自然増を含め削減を求めても、大型開発や軍事費については何の注文もつけていません。来年度は大企業のための法人税減税も予定しています。これではどんなに増税しても、財政再建につながらないのは明らかです。
消費税増税政治許さず
内閣府が20年度で11兆円不足するという赤字額をそのまま消費税で穴埋めしようとすれば、それだけでも4%もの税率の引き上げになります。大企業減税の財源(5%で約5兆円)などを加えれば、さらに大幅に消費税の税率を引き上げることにもなります。
「あとは野となれ、山となれ」―。無責任で乱脈な財政で破たんを広げておきながら国民に負担を押し付ける増税政治は許されません。来年10月からの消費税増税を、まず中止させることが先決です。