東京都議会で、鈴木章浩都議(当時自民党)らが女性都議に対し「早く結婚した方がいいんじゃないの」など女性の人権を侵害するやじを飛ばした問題で、都議会定例会最終日の25日、自民・公明などは、女性蔑視(べっし)発言の究明に背を向けて幕引きを図る決議案を、日本共産党以外の賛成で可決しました。

 同日の都議会には決議案として自民・公明など5党の共同提案によるもの、民主党・みんなの党によるもの、共産党によるものがそれぞれ提出されました。

 議案討論では、日本共産党の白石たみお都議が、鈴木氏を含む人権侵害発言者の辞職と再発防止を強く要求。このほか、いじめ防止条例反対、特別養護老人ホームの待機者、保育所の待機児童解消、オリンピック関連施設計画の見直しなどを求めました。

 共産党が提出した決議案は、鈴木都議の辞職や、女性の人権を侵害する発言をした他の議員が名乗り出て辞職することなどを求めるものでした。自民、公明、民主、結いと維新、みんな、生活者ネットなどが反対。

 決議をめぐって、自民党を中心に数にものを言わせた異様な議会運営が目立ちました。党都議団は、議会運営委員会理事会で謝罪を求める動議を提出しようとしましたが、自民・公明などが反対(民主・みんなは賛成)して上程できませんでした。対応協議のため共産党都議団が緊急に開いた総会中にもかかわらず、議会の開会が強行されました。さらに、本会議中に改めて吉田信夫団長が動議を出すための発言を求めましたが、吉野利明議長は議会運営委員会理事会で決まったことだとして認めず、議事を進めました。

 鈴木氏は採決の間退席し、終了後に席に戻りました。

議員辞職・他のヤジ追及ふれない決議
自公提案、共産以外が同調

 女性議員(みんなの党)に対し、女性の尊厳を踏みにじるやじ発言(18日)に厳正な対応ができるのかどうかが、問われている東京都議会。25日の最終本会議で、日本共産党は議員辞職を求める決議案を提案しましたが、自民、公明、民主、結いと維新、みんな、生活者ネットが反対し不採択に。自民・公明が提案した議員辞職や他の発言者の責任追及にもいっさいふれない決議案には、民主、結いと維新、みんながそろって共同提案者となり、ネットも賛成したため採択されました。

 日本共産党の決議案は、やじが女性に対する重大な人権侵害だと批判し、「早く結婚したらいいじゃないか」と発言した鈴木章浩議員(当時自民)一人の問題で終わらせることはできないと強調。「自分が産んでから」など、他のやじの発言者にも自ら名乗り出ることを求め、徹底解明しきっぱり議員辞職を求める内容です。

 共産党は25日の議会運営委員会で、本会議に鈴木議員の謝罪を求める動議を出すことを申し出ましたが、自民、公明両党が反対し、吉原修議運委員長(自民)が動議を上程させないことを強引に決めたことも、議会運営に汚点を残す結果となりました。

 一方、自・公の決議案は、今回のやじを「人権侵害と言われかねない」とあいまいな表現でごまかし、議員辞職も他の発言者の責任追及もしないという内容です。

 この問題での自民党の対応は極めて異常です。当初から消極的な対応をとり続け、内外の批判が殺到したことを受けて、5日後の23日にようやく、発言者が鈴木章浩都議会自民党政調会長代行であったと謝罪。同党は鈴木議員に対して除名処分でなく、自民党籍を残したまま会派離脱を認めるなどかばい続けました。

 吉原修幹事長は23日の会見で、「自分が産んでから」などのやじが自民党席周辺からでたと指摘されたにもかかわらず、「発言を聞いた議員は一人もいない」などと疑惑隠しに終始しました。

 みんなの党と民主党は、議員辞職は求めない決議案を提案(否決)する一方で、自民・公明案にも共同提案者となり、共産党案には反対しました。 (岡部裕三)