安倍政権が24日、閣議決定した「骨太の方針」と新成長戦略についての日本共産党の山下芳生書記局長の談話は次の通りです。
一、安倍内閣は、本日の閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2014」(いわゆる「骨太の方針」)と、「日本再興戦略改訂」(いわゆる「新成長戦略」)を決定した。しかし、その中心となっているのは、法人税減税や公的年金資金の株式市場への投入など、大株主や外国人投資家を喜ばせる施策ばかりである。国民の暮らしや日本経済の未来をかえりみず、財界・大企業の目先の利益を優先するとともに、政権維持のために、政府による「株価操作」で株高を演出することにきゅうきゅうとする、まともな経済政策とは、とても言えないものである。
一、最大の目玉とされた法人税減税については、来年度から税率引き下げを開始し、現在は35%前後の「実効税率」を数年間で20%台まで引き下げることが明記された。1%引き下げただけでも0・5兆円、5%引き下げれば2・5兆円もの大減税である。トヨタ自動車が「5年間法人税ゼロ」だったことに見られるように、大企業の多くは、各種の優遇税制によって実効税率よりはるかに低い税負担しかしておらず、巨額の内部留保をためこんでいる大企業に、さらに減税をばらまこうというのである。一方、税率引き下げのかわりに「課税ベースの拡大」をあげているが、これは赤字企業にも課税するなど、中小企業への大増税につながるものである。
一、新成長戦略では、「働き方の改革」と称して、「残業代ゼロ」にする「新たな労働時間制度」や「裁量労働制の新たな枠組み」、「名ばかり正社員」を広げる「多様な正社員」の導入・普及などが盛り込まれた。これでは、過労死や働く人間の「使い捨て」がいっそう促進され、「人材力の強化」どころか、企業をささえる人的基盤の崩壊につながることになる。「女性の活躍推進」をうたいながら、女性が働きにくい環境を改善する根本的な対策はなく、配偶者控除や配偶者手当の廃止・縮小など、負担増ばかりである。増税の口実に「女性の活躍」を持ち出すことは許されない。
一、「骨太の方針」では、社会保障について、「いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直し」を進めるとして、ただでさえ不十分な社会保障をさらに切り捨てる方向を明確にした。これは小泉内閣時代の「毎年2200億円の自然増抑制」を復活させるものであり、国保、高齢者医療の保険料や窓口負担の強化、年金給付のいっそうの削減、生活保護の住宅扶助や冬季加算等の削減など、重大な改悪が列挙されている。「社会保障のため」といって消費税を増税しながら、その社会保障を削ってしまう。消費税増税が大企業減税のためにほかならなかったことが、ますます明らかになっている。
一、農業分野で「岩盤規制の打破」などといって行おうとしているのは、全農を株式会社化し、信用・共済事業を地域の農協から分離するなど、農協の実質的な解体を図るものである。安倍政権の「成長戦略」には、食料自給率向上の目標さえなく、「強い農業」どころか、日本農業を支えている家族経営の基盤を掘り崩し、農業と食料の危機をいっそう深刻なものにするだけである。農協中央会(全中)制度を「廃止」し、農業委員会の公選制をなくすことなどには、環太平洋連携協定(TPP)や農地の株式会社所有への反対をはじめ、農政にたいする農民の声や運動を弱体化させようという政治的意図が露骨に表れている。
一、消費税増税と諸物価の値上がりによって、4月の実質賃金は前年比でマイナス3・4%と、4月としては、この20年来最大の落ち込みとなった。「10年ぶりの賃上げ」をはるかに上回る増税が押しつけられ、世論調査でも、7~8割の国民が「消費税増税で生活が苦しくなった」と答えている。この国民生活の苦境を「想定内」といってはばからず、国民の暮らしそっちのけで、大企業減税や目先の株価対策を「成長戦略」などとする安倍政権には、日本経済をまともな成長の軌道に乗せることはできない。
いま求められているのは、大企業の内部留保を活用した賃上げ、中小企業支援と一体となった最低賃金の引き上げ、消費税増税の中止、応能負担の原則をつらぬいた税財政の改革、社会保障の充実など、国民の所得を増やし、家計をあたため、消費と需要を活発にして、経済を立て直す、経済政策の転換である。