主張
サッカーW杯開幕
差別の壁なくし心躍る大会に
4年に1度となるサッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕の笛が鳴り響きました。20回目を迎える今大会はブラジルで64年ぶりの開催となります。日本から見て地球の裏側で繰り広げられるスポーツの祝祭に、胸を躍らせる1カ月になります。
32色のプレーに注目
2、3年にも及ぶ厳しい地域予選を勝ち上がった出場32チームが、大舞台に集結します。サンバの国ブラジルの華麗な足さばき、幼少期からしみついたスペインの巧みなパスサッカー、しなやかさと力強さを兼ね備えたコートジボワールなどアフリカ勢のプレー。W杯は民族性や国独自のサッカー観がにじむ「サッカー文化の見本市」でもあります。32色のスタイルが織りなす芸術を、心ゆくまで楽しみたいものです。
豊かで多様に発展するサッカーの流れに反する残念な動きが、大会前に起こりました。欧州では観客が黒人選手にバナナを投げつけ、日本の競技場ではサポーターが「日本人以外お断り」を意味する横断幕を掲げました。
スポーツは肌の色や国籍の違いを超えてつどい、交流してきたからこそ、多くの人々の心をとらえる文化として発展してきました。その根幹を揺るがす人種差別や排外主義に立ち向かうことは、スポーツ界の使命です。
サッカーは世界でもっとも普及が進み、人気の高いスポーツです。全世界を感動と興奮で包むW杯が、2006年ドイツ大会から「人種差別にノーと言おう」のスローガンを掲げてきた意味は大きいものがあります。
ブラジルは20世紀の前半から黒人たちに活躍の場を広げ、W杯5回の優勝を誇る「サッカー王国」の地位を築き上げました。その地で開かれる今大会が、フェアプレーと友情の花を咲かせ、世界の平和と相互理解をうながすものになるよう、願ってやみません。
5回連続出場となる日本代表は、相手に合わせてたたかうのでなく、「主導権を握るサッカー」(アルベルト・ザッケローニ監督)をめざします。組織力を得意とする日本人の特性をいかしながら、息の合ったパスワークと連動する攻めで、試合を支配する心意気です。前回南アフリカ大会で守備に力点を置いてのぞんだ日本にとっては、壮大で意欲的な挑戦です。
その役割を担う才能が育っています。Jリーグの誕生から20年余り。いまや欧州でプレーする選手が代表の半数を超えています。欧州屈指のクラブに在籍する日本人が何人も現れる時代です。ブラジルで躍動するイレブンが、日本のサッカーをさらなる高みへと引き上げてくれるでしょう。
あり方を問う機会に
ブラジルでは各地で開催前からデモやストライキが相次いでいます。教育や医療についての不満が高まり、施設に巨費を投じることに抗議の声が上がっています。国民に受け入れられる大会のあり方が問われています。それは2020年の東京五輪にも、あてはまるでしょう。
大会は来月13日(日本時間14日)の決勝戦まで全64試合です。五大陸6地域からの出場チームが競い合い、高め合うなかで、サッカーの魅力を存分に発信してくれるでしょう。いよいよキックオフです。
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