教委への首長介入 国民に隠す
22日の国会会期末まで2週間をきった10日、政府・与党が成立をねらう医療・介護総合法案と教育委員会改悪法案をめぐり、日本共産党の追及に厚生労働相が法案の論拠を撤回するなど、成立強行は許されないことがいっそう浮き彫りとなりました。
介護保険改悪 2割負担の論拠、全面撤回
厚労相 小池議員の追及受け
田村憲久厚生労働相は10日、医療・介護総合法案を審議中の参院厚労委員会で日本共産党の小池晃議員の追及を受け、介護保険の利用料引き上げ(1割から2割へ)の論拠を全面撤回しました。厚労省は年金収入359万円(可処分所得307万円)の夫婦をモデル世帯とし、支出を引いても「手元に60万円残る」から負担可能だと説明していました。
田村氏は、モデル世帯の支出額を決める根拠にした、家計調査の「年間収入250万~349万円」の階層について、「実態からいえば350万円以上(の階層)が(モデル世帯に)近い」と答え、従来の説明を撤回。「60万円残る」という論拠の撤回(5日)と併せて、負担増の論拠がすべて崩れ去りました。
小池氏は「年間収入350万円以上の階層の消費支出は342万円だ。モデル世帯は60万円余っているどころか、35万円足りない。貯金を取り崩しているのが実態だ。黙っていても2割負担できるのではなく、支出を急激に削らなければいけないということだ」と指摘しました。
田村氏は「反省している」と答え、2割負担については「消費支出342万円は充実した支出だ。何とかご理解いただきたい」としか言えませんでした。
同日の参考人質疑では「認知症の人と家族の会」の勝田登志子副代表理事が、「手元に60万円残る」との資料の誤りが明らかになったことについて、社会保障審議会介護保険部会の委員として「驚きと怒りを覚える」と発言。「審議会で真摯(しんし)に議論していた資料が間違っていたので撤回するというなら、審議会に差し戻すべきです」と述べました。
教育委改悪法案 “首長が勝手に書き込める”
「大綱」で文科相 田村議員に答弁
下村博文文科相は10日、参院文教科学委員会の教育委員会改悪法案に関する質疑で、首長が策定するとされている教育施策の方針「大綱」に記載する内容について、教科書採択など教育委員会の専権事項は、教育委員会の同意がなくても「首長が勝手に書き込むことは可能だ」と述べました。日本共産党の田村智子議員の質問に答えました。
政府はこれまで、教育委員会の専権事項について「教育委員会が適切と判断した場合においては、記載することも可能」(安倍首相、5月23日)と、教育委員会の同意を条件とする答弁をしてきました。
田村氏は「特定の教科書を採択することも、人事に関する事項も、首長の権限に属さないことまで自分だけの判断で書きこめることになる」と批判しました。
下村氏は「できるだけ協議調整をしていただきたい」と苦しい答弁に終始しました。
田村氏は「本会議の総理答弁と百八十度違う答弁だ。こんな詭弁(きべん)がまかり通ったら法案の審議などできない」と批判。安倍首相出席のもとで委員会を開催するよう求めました。
田村氏は、自民、公明の与党合意文書でも、教育委員会の専権事項は教育委員会との協議対象外であるとしていることを示し、「与党合意とも違う」と強調。「教育の政治的中立性に直接関わる法案の核心部分を国会にも国民にもごまかし、隠すようにして議論を進めてきたことは極めて重大な問題だ」と指摘しました。
委員会後の理事会では、12日に安倍首相出席のもとで質疑を行うことが決まりました。