メディア戦略を重視する安倍晋三首相が、靖国神社参拝や消費税増税実施、集団的自衛権容認への検討指示など、重要な政治行動の節目ごとに、マスメディア幹部と会食している実態がわかりました。これらの問題で、首相がメディア対策に躍起になっていることを示すもの。同時に、権力を監視する役割をもつメディアとしてのあり方が問われています。
昨年12月26日、首相になって初の靖国神社参拝で世界中から批判を浴びた安倍首相。その日夜に会食したのが報道各社の政治部長らでした。首相の参拝には、米政府さえ「失望した」と非難したように、日本による侵略戦争を美化・肯定する歴史逆流だとの批判が国内外から寄せられました。
消費税8%への増税を強行した4月1日夜には、報道各社の記者と懇談、翌日には再び政治部長らと会食。
さらに、首相が執念を燃やす集団的自衛権行使の容認にむけて検討を指示した15日夜には、各社の解説委員、論説委員ら幹部記者と食事しています。このうち1人は、16日未明放映されたNHK「時論公論」で、集団的自衛権問題について解説しています。
国のあり方が大きく問われ、世論も多数が反対している問題が発生しているなかで、権力中枢と安易に接触する姿勢がきびしく問われます。
メディア・トップとの会食も相変わらずで、なかでもフジテレビ・日枝久会長は3回、「読売」渡辺恒雄会長や白石興二社長、「産経」清原武彦会長とは2回など、安倍政権の改憲・増税路線を後押ししているメディアを特別扱いしている実態も浮かび上がります。また、4月からメディア幹部との接触が急増していることも目立ちます。
英国では政権揺るがす大問題に
門奈直樹立教大名誉教授の話 イギリスでは、BBC(英国放送協会)の会長だったダイク氏と当時のブレア首相との癒着が大問題となり、会長公募制採用のきっかけになりました。「メディア王」といわれたマードック氏が経営していたニューズ・オブ・ザ・ワールドは携帯電話盗聴などの事件を引き起こして廃刊になりましたが、その後編集者と政治家との癒着まで暴露され、政権を揺るがす重大問題へと発展しました。
ガーディアンはメディアと政治家の癒着を暴露する調査報道で有名ですが、そういう報道を通じて、英国では国民がメディアを監視する時代です。
日本ではどうか。安倍首相とメディアとの会食やゴルフなどの癒着に加え、タモリのお昼の番組「笑っていいとも!」に出演するなど、首相のメディア利用はあまりにも露骨です。欧米では、政治家のためにメディア対策をやっている人たちを「第5階級」と呼んでいます。安倍首相のメディア戦略にも、そうした“指南役”の存在がうかがえますが、その戦略の片棒をかつぐメディアのあり方がきびしく問われます。
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