主張
「子育て新制度」
中身もすすめ方もひどすぎる
安倍晋三政権は、就学前の子どもの教育・保育のあり方を大きく変える「子ども・子育て支援新制度」の本格実施を来年4月に強行しようとしています。この1年、内閣府の「子ども・子育て会議」で制度や事業の内容、基準などの検討作業がすすめられてきました。会議では「現行基準より下回るのでは」の疑念が相次ぎました。
選択を押しつける異常さ
今回の「新制度」は、これまでの幼稚園と保育所にくわえ、新たな「認定こども園」制度や地域型保育事業をはじめるというものです。政府は新制度の枠組みを決め、現在の施設をむりやり押し込む政策的な誘導をはじめています。
そのため、全国各地で「制度が複雑でよくわからないのに選択が迫られて不安だ」「行政に質問しても答えてもらえない」「いまのままいきたいが、国の補助は保障されるのか」など、関係者のあいだで将来への深刻な不安が生まれています。
この間、政府は保育所の民間委託・企業参入をすすめ、保育の公的な保障と責任を後退させてきました。幼稚園と保育所の一体化をねらい、2006年には、就学前の子どもに教育・保育を一体に提供する施設だとして認定こども園制度をスタートさせました。しかし、多くの父母に受け入れられず、計画どおりすすまなかったのです。
そのため12年、民主党政権と自民、公明の3党の合意によって消費税増税をすすめた「社会保障・税一体改革」の一環として新制度を強行しました。しかも、財源は消費税10%増税を前提にしています。制度発足前からすでに予算が不足し、「売り物」としてうちだした保育士の処遇改善をまっさきに削減する破たんぶりです。保育時間を短時間(8時間)、標準時間(11時間)と区分して認定することの矛盾や園庭や給食設備の基準緩和など、「子育て会議」でも懸念された問題がそのまま政省令案に盛り込まれています。
新制度の内容は保育所、幼稚園に在籍している子どもの保護者にも、周知されていません。「待機児解消」「子育て支援」のうたい文句ですが、認可保育所を増やすのではなく公費支出を抑え、安上がりな保育で対応する新制度では待機児童の解消はできません。
政府のスケジュールでは6月に幼稚園の新制度移行の意向調査、地方自治体の条例制定、10月には幼稚園、保育所が新制度の基準を満たしているか審査し、保護者は保育・教育の給付の必要を自治体に申請し認定を受け、入所を申し込むとしています。
混乱のなか、一方的な押しつけで新制度を強行することは許されません。“施行は凍結すべきだ”の声も出されています。
親の願いにこそこたえよ
そもそも保育所と幼稚園は制度も役割も異なる施設として歴史をかさねてきました。幼稚園・保育所には380万人の園児がいます。
保育・幼稚園関係者が、児童福祉法24条にある市町村の保育責任、幼稚園の私学助成制度を守り、新制度への“移行は義務づけない”ことを確認させ、たたかってきています。
幼稚園、保育所の関係者、父母が手を結び、国と自治体に就学前の教育・保育施策の拡充を求めて、草の根からの要求をいまこそ結集していきましょう。
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