明快で断固とした姿勢を感じる判断でした。
Jリーグが13日、浦和に下した処分のことです。浦和サポーターが掲げた「JAPANESE ONLY」の横断幕に関し、村井満チェアマンは、こう語りました。
「問題の本質が極めて重いものであるというメッセージを伝えることが大切」。無観客試合という史上最も重い処分の理由がここにあります。
FIFAが決議
すでに国際サッカー連盟(FIFA)は昨年5月の総会で「反人種差別・差別に関するたたかい」を決議しています。Jリーグも同年から、規約に「人種、性、言語、宗教、政治…に対する差別を行ってはならない」との規定を盛り込みました。
FIFAが決議を出したのは、「人種差別主義と人種差別が、いまだにサッカーの世界に映し出されている」現実があるからです。
とくに相次いでいるのは、欧州です。黒人選手にたいし、猿の鳴きまねをする、ピーナツやバナナの皮を投げるなどの行為が後を絶ちません。
移民排斥の動きなど、政治的な背景のある場合が多くあります。
10年ほど前、極右政党のドイツ国家民主党が、同代表のアフリカ系の選手がふさわしくないとキャンペーンをしたことがありました。「真のドイツ代表の色は白だ」と。ドイツサッカー協会はすぐに訴えを起こしました。理由は、「人種差別は知らないうちに広がる。どんな小さな差別も絶対に許さない」でした。
FIFAは06年のドイツ・ワールドカップ(W杯)から、人種差別反対の取り組みを本格的に開始し、選手たちもともに“たたかい”を挑んできました。
ドイツ大会での選手たちのメッセージは忘れられません。ブラジルのロナウジーニョ選手は呼びかけました。
「人間は肌の色や人種が違っていても人間なんだ。私は言いたい。人種差別というのは正しい道ではないということを」。この後も多くの選手が、人種差別反対の発言をし続けているのです。
人種、宗教、身分、政治的な立場を超えて、一堂に会し、相互理解を図ることにスポーツの本質があります。差別を許せば、その本質が失われます。世界のサッカー界が重視するのは、そのためです。今回のJリーグの姿勢は、そのたたかいの上にあります。
考える場設けて
村井チェアマンはこうも語りました。
「正直とても残念だったが、こうした問題をあいまいにしないで、むしろ正面から向かっていくことが全体をよくする」。そう思います。その上で、さらによくするための提案があります。クラブや選手、サポーターも含め、この問題を考える場をつくってほしい。W杯の準決勝で選手が、マイクを手に反人種差別宣言をします。同様に、選手が社会に積極的にアピールすることがあっていい。
Jリーグが変わっていくことは、スポーツという枠を超え、社会を変える勇気あふれるメッセージになると思うからです。 (和泉民郎)