あまりに腹立たしく、残念な行為というしかありません。
8日、サッカーJ1の浦和―鳥栖戦(埼玉スタジアム)でのこと。浦和のゴールネット裏のスタジアムに入る通路に「JAPANESE ONLY」(日本人以外お断り)と英語で書かれた横断幕が掲げられました。その隣には日の丸が掲げられ、奥には旭日旗もありました。
浦和公式サイトによると、クラブ側は試合開始1時間後の午後5時ごろにこれを確認。試合終了後の6時になってクラブ側がようやく強制的に撤去しました。クラブは掲げた当事者に事情を聞いているといいます。
この横断幕はサポーターに向けたものというより、一部選手に対する差別的な表現だという指摘があります。しかし、どちらにしてもスポーツを冒涜(ぼうとく)するものには違いありません。
選手が「残念」
試合後、浦和の槙野智章選手は自身のツイッターでこう憤りました。
「負けた以上にもっと残念な事があった…。浦和という看板を背負い、袖を通して一生懸命闘い、誇りをもってこのチームで闘う選手に対してこれはない。こういう事をしているようでは、選手とサポーターが一つになれないし、結果も出ない」
欧州サッカーの現場では、いまも選手に対する差別的なやじやピッチに物を投げ入れる行為が繰り返されています。国際サッカー連盟(FIFA)は人種差別撲滅に向け、本格的に取り組み、昨年5月の総会で懲罰を義務化しています。
一方、救われたのは、槙野選手の反応とともに、周囲のサポーターの健全なエネルギーです。
翌9日、J2の試合で岐阜のサポーターは応援席に「人種差別に反対」との横断幕を掲げました。札幌のサポーターも「応援好きONLY」との横断幕を掲げたそうです。何より8日にこの横断幕が掲げられた時、それを世間に知らせ、クラブ側に抗議したのは、浦和のサポーター自身でした。
相互理解こそ
人種、宗教、身分、政治的な立場を超えて、一堂に会し、人々の相互理解を進めることにスポーツの本質があります。だからこそ、スポーツがこれまでも平和や民族融和に貢献できたのです。これを踏みにじる行為を許せば、スポーツは成り立ちません。
Jリーグも厳正な対応を検討しています。それは当然としても、これを機に、多くのサポーターがみずからの手で認識を深め合い、議論し合うことが、何よりも求められているように思います。(呉 紗穂)
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