主張

有事核持ち込み

非核三原則破壊の外相答弁

 歴代政府が「国是」としてきた非核三原則の一つ、「核兵器を持ち込ませず」に公然と風穴を開ける―。岸田文雄外相はそんな重大な意味を持った民主党政権時代の国会答弁を「安倍(晋三)内閣としても引き継いでいる」と明言しました(14日、衆院予算委員会)。どんな事態でも核持ち込みを認めない「国是」を根本転換し、核兵器の使用も容認する大問題です。

「国是」として確立

 岸田外相が安倍政権として引き継ぐと言明したのは、“将来の緊急事態に際し日本への核持ち込みが必要になった場合には、時の政権の判断で非核三原則の例外を認める”という答弁です。2010年3月17日の衆院外務委員会で当時の岡田克也外相が行いました。今回の岸田外相の答弁も、岡田氏の質問を受けてでした。

 非核三原則は、1967年の佐藤栄作首相の国会答弁や71年の衆院本会議決議によって「国是」として確立しました。「核兵器を持ち込ませず」の原則は、「核兵器をつくらず、持たず」の原則とともに非核三原則を構成し、「広島、長崎を繰り返すな」という日本国民の叫びを背景に、米軍による核持ち込みに反対するたたかいの高まりのなかで生まれました。

 問題の岡田外相の答弁は、日本への核持ち込みに関する日米密約の調査結果公表直後に行われました。当時の民主党政権は密約を廃棄する対米交渉を行わず放置するという態度をとりました。加えてその舞台裏では、結果公表時の応答要領を事前に米政府と打ち合わせ、「時の政権の判断」という岡田外相答弁も米側の了承をもらっていたことが明らかになっています。日本への核持ち込みの選択肢を握り続けようとする米政府に、「国是」である非核三原則をほごにしてでも追随協力するというとんでもない姿勢です。岸田外相の答弁は、安倍政権もこうした立場を引き継ぐと宣言したものです。

 オバマ米政権は昨年6月、「核兵器使用戦略」を策定し、「米国またはその同盟国と友好国の死活的利益を守るため極限的な状況における核兵器の使用」があり得ることを明らかにしました。これを受け岸田外相は1月、新たな核政策演説で、「日米同盟の下での拡大抑止の信頼性」を強調するとともに、「核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定」すべきだと述べ、「集団的自衛権行使」の口実がつけば「極限状況」の名で核使用が許されるとの立場を示しました。岸田外相答弁もこれと軌を一にした動きです。

 安倍首相は、米国が91年に戦術核兵器の海洋配備をやめたとして、日本への核持ち込みの可能性はなくなっていると述べています(1月31日、衆院予算委)。

危険は現実に存在

 しかし、日本への核持ち込みの危険は現実に存在し続けています。オバマ政権は、「核弾頭付き巡航ミサイルを退役させる」とする一方、その代わりとしてB52爆撃機やF16戦闘機などに搭載可能な核爆弾B61が「アジアの同盟諸国の安全を保証するため意義深い役割を果たす」としています(11年11月、タウシャー国務次官=当時)。

 日米同盟のためなら核兵器使用も是認する―。核兵器反対の国民世論に対する危険な挑戦を許してはなりません。