主張

安倍流「大学改革」

大学自治の骨抜きを許すな

 安倍晋三政権は、産業競争力強化のために「大学のガバナンス改革を推進する」として、「大学の自治」の保障である教授会の権限を制限するための学校教育法改定案を、今国会にも提出しようとしています。「学問の府」である大学のあり方をゆるがす重大問題です。

教授会の審議を制限

 ガバナンス改革の方針を示した12日の中央教育審議会(文科相の諮問機関)大学分科会の「審議まとめ」は、教授会の審議事項が「経営に関する事項まで広範に及んでおり、学長のリーダーシップを阻害している」とし、教授会の審議事項から経営に関することをいっさい排除することを打ち出しています。学校教育法93条は、「大学の自治」の保障のために「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と定めています。この「重要な事項」を教育課程の編成など、限られた事項に制限するというのです。

 しかし、大学の経営は、組織・予算・人事に関する事項が中心であり、それは教育研究のあり方と不可分です。教育研究に直接責任を負う教授会が審議に参加してこそ、適切な判断が可能となります。教授会審議の「重要事項」に経営も含まれることは、政府も国会答弁で認めています(参院文教科学委員会2003年7月8日)。経営に関わる審議から教授会を排除することは、学長による上意下達の運営を強め、教育研究への教職員の自主性と活力を損なうだけです。

 世界では、教職員が予算配分も含む大学の意思決定に参加する権利を持つことが大学自治の原則とされています(ユネスコ「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」)。教授会の審議事項の制限は、こうした原則にも反します。

 「審議まとめ」は、教職員の選挙による学長選出についても「過度に学内の意見に偏る」として見直しを求め、「投票の結果はあくまで参考の一つ」にし、投票結果にもとづかない選出を促しています。京都大学や大阪市立大学で起きている、学長選挙廃止の動きを全国に広げるものです。

 しかし、教職員の信任抜きに、学長がリーダーシップを真に発揮することはできません。教授会を基礎にした運営と学長選挙は、ともに「学問の府」にふさわしい自治のあり方として歴史的に形成されてきました。これを崩すことは「大学の自治」を骨抜きにし、自主的に改革する活力を奪うことになります。

 大学分科会では、財界関係者が執拗(しつよう)に学校教育法改定を求めました。経団連や経済同友会は、教授会の「諮問機関化」や学長選挙廃止とともに、大学の再編・統合、国立大学の学費値上げ自由化などを求める「提言」をまとめています。学校教育法改定の狙いは、こうした財界の意に沿う「改革」を各大学で学長が推進する際に、その障害となる教授会を抑えこむことにほかなりません。

財界いいなりでよいのか

 大学は真理の探究の場であり、教育研究を通じて国民に対する責任を負っています。そのために「学問の自由」と「大学の自治」が認められているのです。それが骨抜きにされ、政府・財界いいなりの「大学改革」をすすめるなら、大学は国民への責任を果たせなくなります。「大学の自治」を守る共同を広げることが期待されます。