秘密保護法、消費税増税、原発推進、米軍新基地建設、靖国神社参拝の強行など、民意に背く危険な暴走を続ける安倍政権。日本共産党の志位和夫委員長は29日の衆院本会議の代表質問で、安倍政権の暴走に正面から対決し、その根本転換を迫りました。
秘密保護法
志位 廃止法案審議応じよ
首相 違憲立法「施行準備進める」
志位氏は、昨年の臨時国会で秘密保護法に反対する1万5000人の市民が国会を包囲する中で同法の成立が強行され、今国会も召集日に秘密法廃止を求める大包囲行動で幕開けとなったと指摘。秘密法の廃止などを求める地方議会の決議や意見書がこの1カ月余りで100自治体を超えることを示し、「憲法の基本原理をことごとくじゅうりんする秘密保護法に反対する声は、強行後もさらに広がっている」と強調しました。
志位氏は、日本共産党が秘密保護法の廃止法案を提出することを改めて表明。安倍晋三首相が強行後に「私自身がもっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と述べたことをあげ、「廃止法案の審議に『丁寧に時間をとって』応じるべきだ。廃止法案の成立のため、党派を超えた共同を呼びかける」と力を込めました。
首相は「国民に丁寧に説明を重ね、適正かつ効果的な運用が図られるよう施行準備を進めていく」と述べ、世論を顧みず違憲立法を国民に押し付ける姿勢を示しました。
原発
志位 即時ゼロ政治決断で
首相 「“もうやめた”といかない」
「『即時原発ゼロ』を政治決断し、再生可能エネルギーの思い切った普及と低エネルギー社会への転換にこそ力を注ぐべき道だ」
志位氏はこう述べ、「原発ゼロ」「再稼働」の是非という2点から首相の基本姿勢をただしました。
志位氏は、安倍政権のエネルギー基本計画から「原発ゼロ」の目標が影も形もなく消え去り、首相も一切口にしないことを指摘。世論調査でも「今すぐ廃止」「将来は廃止」が7~8割にのぼっているとして、「民意に背いて、将来にわたって原発との共存をはかるのか」とただしました。
首相は「現実を考えると、そう簡単に『原発はもうやめた』というわけにはいかない」と原発に固執する意向を表明しました。
原発再稼働の問題で、志位氏は、原発事故の被害の深刻化、制御不能な非常事態の継続、原因究明も途上という実態を指摘。再稼働すれば「核のゴミ」が増えるにもかかわらず、最終処分場の見通しも立っていないことや、「安全が確認された原発」の再稼働に6割超(図)が反対していることをあげ、「国民の理解が得られなくても、再稼働するつもりか」とただしました。
首相は「安全審査に合格した原発の再稼働を判断する」と、民意に背を向ける姿勢を示しました。
志位氏は、現在すべての原発が停止しているとして、「このまま再稼働せず、廃炉に向かうことこそ最も現実的で責任ある態度だ」と批判しました。
辺野古新基地
志位 市長選結果受け断念を
首相 「移設へ全力」と民意無視
志位氏は、沖縄・名護市長選(19日)で米軍新基地建設に反対する稲嶺進市長が推進派の自民党候補に圧勝したことをあげ、「強圧と札束で基地受け入れを迫った安倍政権の卑劣なやり方に、沖縄は屈しなかった」と強調。「政府はこの結果を重く受け止めて、新基地建設をきっぱり断念すべきだ」と迫りました。
さらに志位氏は、首相が施政方針演説で名護市長選の結果について一言も触れず、新基地建設を強行する姿勢を示したことについて、「市民が選挙で下した判断を無視し、7割を超える『県内移設』反対の声を踏みつけることが民主主義を否定する行為だとは考えないのか」と批判。普天間基地(同県宜野湾市)がもともと米軍の無法な土地強奪のうえにつくられた経緯をあげ、「返還に条件をつけること自体、許されない。無条件撤去を求めて、対米交渉を行うことを強く求める」と述べました。
首相は名護市長選の結果について「コメントすることは差し控えたい」と無視。新基地建設については「民主主義を否定する行為であるとの指摘はあたらない。日米間で緊密に連携し、速やかな移設に向け全力で取り組んでいく」として、建設手続きの強行を続ける姿勢を示しました。
靖国参拝
志位 侵略戦争の美化慎め
首相 「当然のこと」と開き直る
昨年12月に靖国神社参拝を強行した首相。志位氏は、靖国神社が戦中、国民を戦場に動員する道具とされ、現在も過去の侵略戦争を美化・宣伝して、A級戦犯をまつっていると指摘。「この施設に参拝することは、総理がどのような意図をもっているかにかかわりなく、侵略戦争を肯定・美化する立場に自らの身を置くことを世界に宣言することに他ならない」と強調しました。
そのうえで、世界各国からも批判が広がっていることを指摘(表)。「靖国神社への参拝はもとより、『村山談話』(1995年)の見直しなど、過去の侵略戦争を肯定・美化する一切の行動を慎むことを求める」と主張しました。
首相は、靖国神社参拝は「国のリーダーとして当然のこと」と開き直りました。
「好循環」いうなら…
志位委員長は代表質問で、「経済の好循環」をいいながら、消費税増税や社会保障の改悪で10兆円もの大負担増を押し付ける暮らし破壊の政策を批判。同時に、対案として二つの根本的な政策の転換を提起しました。
消費税増税中止こそ
第一は、4月からの消費税増税の中止です。「景気回復のすそ野は着実に広がっている」と首相はいいますが、日本経済の実態はそうなっていません。志位氏は、賃金が18カ月連続で減少するなかで、生活必需品が値上がりし家計と中小企業を苦しめていること、国内総生産(GDP)の実質成長率(年率換算)は減速傾向が明らかになっている(図)ことを指摘しました。
志位氏は、このような経済情勢のもとで消費税増税など空前の負担増を強行すれば「経済を壊し、財政も共倒れという『悪循環』の引き金を引くことになる」と警鐘を鳴らし、消費税率引き上げの中止を求めました。
これに対し首相は、消費税増税は「社会保障の安定財源を確保するため」などと強弁。具体的な転嫁対策を示し影響の緩和策にふれたものの、国民の暮らしの実態は眼中にない姿勢を示しました。
賃上げ3政策実行を
転換の第二は賃金の引き上げです。志位氏は3つの政策の実行を求めました。
内部留保の活用
一つは270兆円にのぼる大企業の内部留保の一部を賃上げに活用することです。首相が昨年の臨時国会で、政府が設置した政労使会議で内部留保の活用を「お願いする」と約束したことを取り上げ、実行を要求しました。首相は、内部留保活用の必要性は認めるものの「昨年末の政労使会議でまとめた共通認識をふまえ、各企業が対応すると期待する」と述べるにとどまりました。
最賃の引き上げ
二つめは、最低賃金の抜本的引き上げと、そのための財政出動です。首相が「賃上げする企業を応援する税制の拡充」と主張していることに対し、志位氏は、雇用の7割を支える中小企業の7割は赤字であり、法人税を減税しても恩恵はなく、中小企業への直接支援を行いながら最低賃金を引き上げることが重要だと述べました。
首相は、中小企業への支援は重要との認識を示しました。
雇用ルール強化
三つめは、雇用のルール破壊をやめ、人間らしく働ける雇用のルールを強化することです。志位氏は、安倍政権が派遣労働の無制限拡大、解雇自由化、「サービス残業」の合法化などを進めようとしていることをあげ、「政府主導の『賃下げ政策』だ」と批判しました。その上で、労働者派遣法の抜本改正、ブラック企業の規制など、人間らしく働くルールの確立を求めました。首相は労働法制の改悪について「多様な働き方の実現のために行う」などと開き直り、合理化しました。