「しんぶん赤旗」

名護市長選 稲嶺氏圧勝―“新基地ノー”揺るがず 安倍政権の強圧はね返す

2014/01/20 11:09 投稿

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 f7a823517c0c6fb21786e9e35719323b723a5baa安倍政権による新基地建設押し付けを許すかどうかが最大の争点となった沖縄県名護市長選が19日、投開票され、「辺野古の海にも陸にも基地をつくらせない」と公約する現職の稲嶺進候補(68)=日本共産党、社民、社大、生活推薦=が圧勝しました。安倍政権の全面支援を受け、「辺野古移設推進」を掲げた末松文信候補(65)=自民推薦=を破りました。

稲嶺氏「市民守る先頭に」

 午後8時に当選確実を報道各社が伝え始めると、選挙事務所につめかけた支持者から「やったー」の歓声が響き渡りました。「ススム」コールと指笛のなか稲嶺氏は「市長として環境や市民の安全・安心を守る先頭に立つ」とのべ、知事が埋め立てを承認しても市長権限を使って基地建設を阻止していくことを強調。「辺野古埋め立てを前提とした協議はいっさい拒否する」と表明しました。

 安倍政権が自民党の沖縄関係の国会議員や県連の「県外移設」の公約を強圧で変えさせ、県知事に新基地建設のための埋め立て承認をさせたことに対し、稲嶺氏は「政府が権力をむき出しにしても名護市民はお金やどう喝に屈しない。市民・県民の誇りを示そう」「日本の政治のあり方を問う選挙。大義はわれわれの側にある」と訴え続けました。

 この訴えに、「党派を超え、力を合わせ、政府の圧力をはねかえす」(かつては自民党会派に属した比嘉祐一市議会議長)と共同が大きく広がり、「沖縄は屈しない」の声が高まりました。

 選挙結果は、「辺野古移設反対、普天間基地閉鎖・撤去」の「オール沖縄」の声が強圧や背信によってゆらぐものでないことを示し、安倍政権の暴走に痛打を与えるものとなりました。

 今回の市長選は、新基地建設計画がもちあがって以降の5回の市長選で初めて基地容認・推進派が「移設推進」を明言し、争点が鮮明になりました。

 末松陣営は「県、国のパイプ」による北部振興策を強調。応援に入った自民党の石破茂幹事長が500億円の「名護振興基金」創設をちらつかせ、業界団体出身の参院議員も次々と名護入りし、企業・団体を締め付けるなどなりふり構わない組織戦を展開しましたが、市民はノーの審判を下しました。

民意は下された

沖縄・名護市長選 稲嶺氏

新基地の是非 正面から問い勝利

 民意は決しました。

 まれにみる大激戦となった沖縄・名護市長選。市民は「辺野古の海にも陸にも基地を造らせない」と訴え続けてきた稲嶺進市長を再び選び、「基地はいらない。子や孫に、負の遺産を残さない」という民意を、これ以上ない、強い形で示したのです。

市民投票時点で

 本来なら、1997年12月の名護市民投票で、辺野古の海上基地反対が多数を決めた時点で、民意は決していました。

 これ以上、民意を無視することは許されません。安倍政権とオバマ米政権は、辺野古への新基地計画をただちに撤回すべきです。

 1996年12月のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意以来、米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の辺野古「移設」の是非は、沖縄県内のあらゆる選挙で問われてきました。

 しかし、従来の選挙では、新基地推進派がみずからの立場を隠す、あるいは7~8割が新基地に反対する民意におされて、「県外移設」や「条件付き推進」を表明。争点隠しに躍起になってきました。

 これに対して、今回の名護市長選は新基地の是非が正面から問われる、初めての選挙になりました。地元紙の世論調査でも有権者の5割以上が「辺野古」を第1の争点にあげました。

 稲嶺市長は、「新基地ノー」を前面に掲げ、基地と引き換えの米軍再編交付金に頼らない街づくりを進めると訴えてきました。

 一方、安倍政権が全面的に支援する末松文信氏は辺野古新基地問題の「決着をつける」と表明。基地と引き換えの再編交付金や「振興基金」による利益誘導で、無条件の基地推進を打ち出したのです。

 その選挙で稲嶺氏が勝利したことは、日米両政府を始めとした新基地推進勢力への、これ以上ない、決定的な審判となりました。

国家権力総動員

 名護市長選で問われたもう一つの争点は、日本の民主主義のあり方です。

 安倍政権は名護市民・沖縄県民を屈服させるために、国家権力を総動員して襲いかかってきました。

 「辺野古新基地ノー」の県民総意を突き崩すため、沖縄選出の自民党国会議員や党県連、さらに仲井真弘多県知事も押さえつけ、普天間「県外移設」公約を撤回させました。分裂していた新基地推進派の候補も強権的に一本化させました。

 さらに選挙終盤には自民党の石破茂幹事長が入って「名護振興基金500億円」を表明。閣僚や党幹部を続々と投入し、「交付金」「特区」を連呼しました。

 これに対して市民からは「札束でほおをたたくやり方だ」「沖縄県民は金で何でもいうことを聞くと思っているのか」との反発が相次ぎました。

 稲嶺氏は、「公約が権力・金力で覆されることがまかり通っていいのか」と批判。「名護のことは名護市民が決める」「市民・県民の誇りを示そう」と訴え、共感を得てきました。

 普天間基地の「県外・国外移設」公約を裏切った民主党政権同様、公約を裏切った者は、必ず厳しい審判を受ける。それは安倍政権の暴走に対する審判であり、暴走政治の「終わりの始まり」でもあります。また、歴代政権の「安保絶対」政治も今後、問われることになるでしょう。

 今回の選挙では、立場を超えた幅広い人々が、子や孫たちの未来のために辺野古の基地を造らせない、との思いから稲嶺陣営に結集しました。末松陣営は最終盤、「稲嶺=共産党」との分断攻撃を仕かけてきましたが、稲嶺陣営の結束は最後まで崩れませんでした。

 新しい共同の輪が広がったのも、特筆すべき動きだったといえます。(竹下岳)

米軍辺野古新基地建設をめぐる主な動き

 95年 9月 沖縄本島で米海兵隊員による少女暴行事件

 96年 4月 日米両政府が普天間基地の返還で合意

    12月 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告で沖縄本島東海岸沖への新基地建設を決定

 97年11月 政府が名護市辺野古沖への基地建設案を決定

    12月 名護市の市民投票で新基地建設反対が過半数

 98年 2月 大田昌秀沖縄県知事が新基地建設拒否を表明

 99年11月 稲嶺恵一知事が辺野古への軍民共用空港建設案を提示

    12月 岸本建男名護市長が新基地受け入れを表明

 02年 7月 政府が埋め立てによる新基地建設案を決定

 06年 5月 在日米軍再編ロードマップ(行程表)でV字形2本滑走路の新基地建設案を決定

 10年 1月 名護市長選で新基地建設反対の稲嶺進氏が当選

     9月 仲井真弘多知事が普天間県外移設の立場を表明

 11年 6月 日米両政府が埋め立てによる新基地建設で合意

 13年 2月 日米首脳会談で新基地建設の早期実施を確認

     3月 政府が辺野古沿岸部の公有水面埋め立てを申請

     4月 日米両政府が普天間基地返還を22年度以降などとする計画で合意

    12月 安倍晋三首相が仲井真知事と会談

        仲井真知事が埋め立て承認

 14年 1月19日 名護市長選で稲嶺進市長が再選  

(注)肩書はいずれも当時

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