主張

秘密保護法準備

強行許さず撤廃への運動急務

 安倍晋三政権は、国民の強い反対を押し切って昨年末決めた秘密保護法を施行するための「情報保全諮問会議」の初会合を開きました。「諮問会議」は秘密保護法審議の最終盤で安倍政権が国民の反発をかわすために持ち出してきたもので、「特定秘密」の指定や解除、秘密を扱う公務員らの適性評価の「基準」などを議論することになっていますが、個別に秘密指定の是非を検討するわけではありません。「諮問会議」で統一基準を決めたからといって、秘密保護法が大手をふって施行されるなどというのは論外です。

国民の批判かわすため

 秘密保護法は国民の多数が反対、ほとんどが前国会中の成立には反対と慎重審議を求めていたのに、自民党と公明党が中心となって成立を強行したものです。成立強行直後のマスメディアの世論調査で安倍内閣の支持率が軒並み急落、「毎日」の調査で6割の国民が「不安を感じる」と答えていたことからも、成立強行に大義がなかったことは明らかです。

 安倍政権は秘密保護法の成立強行にあたって、国民の批判をかわすため、有識者による「情報保全諮問会議」や官僚による「保全監視委員会」の設置を持ち出しました。しかしこれらの機関によって、「特定秘密」の際限ない拡大や恣意(しい)的な運用に歯止めがかかるわけではありません。

 秘密保護法は、外交、防衛、テロ、スパイ防止など広範な行政情報を、各行政機関の長が「安全保障に支障がある」と判断しさえすれば「特定秘密」に指定し、情報を漏らした公務員も、情報を手に入れようとした国民も厳罰で処罰するものです。いくら有識者による「諮問会議」で一般的な基準を決めたからといって、秘密を指定するのは行政機関の長ですから、秘密の範囲がどこまでも広がる危険はなくなりません。

 秘密保護法で特定秘密と指定されれば、それこそ、国民の目、耳、口がふさがれ、国民の「知る権利」が奪われてしまいます。それだけでなく、秘密を扱う公務員や国の仕事を請け負う民間事業者は「適性評価」で飲酒癖から家族関係、友人まで洗いざらい調べられる、著しいプライバシー侵害がおこなわれます。憲法の基本原理を根こそぎ蹂躙(じゅうりん)する希代の悪法が「諮問会議」の設置ぐらいでごまかされてはなりません。

 しかも安倍政権は、秘密保護法で外国の情報が得られやすくなるとの口実で、外交・安全保障の司令塔になる「国家安全保障会議」(日本版NSC)を設置し、昨年末には国家安全保障戦略(日本版NSS)を決め、首相官邸の国家安全保障局も立ち上げました。秘密保護法はまさに日本版NSCと一体になった「戦争する国」の体制整備です。国民の基本的人権を奪う弾圧立法、国民を戦争に引き込む戦時立法は、施行を待たず撤廃するしかありません。

「読売」主筆の座長就任

 安倍政権が秘密保護法の施行のために設置した「諮問会議」の座長に、日本最大の発行部数を持つ読売新聞の会長・主筆が就任したことは見過ごせません。「読売」は秘密保護法に反対しませんでした。国民の圧倒的多数が反対する法律の施行にまで手を貸すのか。メディアとしてその姿勢を問われることは免れるわけにはいきません。