「夢を形にするために、500億円の名護振興基金をつくる」
16日、「3日攻防」に突入した沖縄・名護市長選(19日投票)で辺野古の新基地を推進する末松文信候補の支援に入った自民党の石破茂幹事長は、宣伝カーの上で高らかに宣言しました。
「200年」続く負担
ただ、石破氏は、この基金は「名護市民のご負担」(石破氏)=辺野古の新基地受け入れと引き換えであることを明言しています。「名護市民を世界一幸せにする」といいますが、200年も続く基地負担を押し付けられて、どうして幸せになれるのでしょうか。
この基金は総額1000億円の「北部振興事業費」など、県民を屈服させるための“アメとムチ”政策の焼き直しです。多くの市民・県民が「誇りと尊厳を傷つけられた」と憤っている「札束でほおをたたくやり方」そのものです。
しかも、この「500億円」の内訳を見ると、どこが「名護振興」なのか、疑問を感じざるを得ません。
看板の掛け替え
その最たるものは、那覇空港第2滑走路の増設です。名護市街地から80キロも離れた空港の滑走路建設がなぜ「名護振興」なのでしょうか。しかも、増設費用は、来年度予算案だけで330億円が計上されています。
また、県立北部病院と北部地区医師会を統合して基幹病院を建設するといいますが、これはすでに沖縄県が検討に入っています。基地と引き換えのカネで建設するようなものではありません。
何より、この基金は、基本的に国が出資する「北部振興事業」とはちがい、「国・県・市それぞれが負担する」(石破氏)ものです。つまり、3者が出資した基金を事業費にあてるというもの。国の分担割合は不明確です。
しかも、石破氏は500億円について「一括交付金400億円をベースにする」と述べています。一括交付金はすでに政府として決定しており、単なる「看板の架け替え」の疑いが濃厚です。
末松氏は、自身が掲げる「末松ビジョン」が、「確実に実施できる」と絶賛し、宣伝カーの上で「まことにありがとうございます」と平身低頭しました。しかし、末松氏はこれまで同ビジョンの財源として、基地と引き換えの米軍再編交付金などを挙げていました。つまり、再編交付金は確かな財源にならないことを告白したようなものです。
末松氏は、米軍再編交付金に頼らない稲嶺ススム市長の政策を「絵に描いた餅」だと非難しますが、どちらが「画餅」であるかは明白です。(竹下岳)