秘密保護法の身辺調査に関与
国民監視活動を行う“情報保全部署”が、陸上・海上・航空自衛隊の司令部である各幕僚監部に存在することが14日、本紙の調べでわかりました。この部署は、違法活動が裁判でも認定されている自衛隊情報保全隊(情報保全隊)と密接に連携しており、秘密保護法にもとづく自衛隊員や軍事関連企業社員への身辺調査である「適性評価」にも関与するとみられます。自衛隊ぐるみの国民監視体制が、いっそう強化される危険が浮き彫りになりました。
陸幕で情報保全隊と連携しているのは運用支援・情報部。防衛省の「陸上幕僚監部の内部組織に関する訓令」によると同部情報課には「情報保全室」があり、「自衛隊情報保全隊の管理に関する連絡」や「国内情報の収集整理及び配布」が任務と明記しています。
自衛隊の情報活動に詳しい元幹部は、「その意味は、情報保全隊と連携して、市民の平和運動などを監視・記録して必要な部署に知らせるということ」だといいます。
陸自情報保全隊(2009年に自衛隊情報保全隊に統合)の隊長だった鈴木健氏は、仙台地裁で違法判決が出た、情報保全隊による国民監視差し止め訴訟の控訴審(仙台高裁)で証言。情報収集は「(陸幕)運用支援・情報部から指示された」と認めています。
情報保全室は、空幕運用支援・情報部と海幕指揮通信情報部の情報課にも設置されています。空幕の同室は訓令で「国内情報の収集整理及び配布の実施」が任務と記述。海幕の同室は、同様の訓令任務を持つ同課情報班と一体で活動します。
情報保全部署は、秘密保護法の「適性評価」を先取りして自衛隊が実施する「適格性確認」でも重要な役割を果たしています。「適格性確認」とは、“秘密”を扱っていいかどうか、自衛隊員など国家公務員の身辺調査をする制度です。
日本共産党が入手した海自の「適格性確認」のための内部文書でも「(配偶者の帰化を確認するため)海幕(指揮通信情報部の)情報課長等からその旨を指示された場合」に公的書類を提出するよう指示しています。
「適格性確認」に詳しい自衛隊関係者は、「身辺調査で実際にチェックを行うのは情報保全隊だが、その情報に基づき『適格性』を判定するのは幕僚監部の情報保全部署だ。秘密保護法のもとでは、さらに役割が大きくなる」と語っています。
防衛省は、各幕僚監部の情報保全部署の活動についての本紙の取材に、「訓令に書かれている通りの活動を行っている。(具体的活動内容は)今後の自衛隊の活動に支障が生じる可能性があることから、回答は差し控える」としました。