ad6f0af8ddc9d9a07fe750c066857d9d632d9a31 12日に告示された沖縄・名護市長選。最大争点になったのが、米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる辺野古沿岸部への、V字形滑走路の新基地建設の是非です。自民党候補は「基地を受け入れて再編交付金260億円を受け取る」と主張しますが、その「代償」は耐用年数200年、垂直離着陸機MV22オスプレイ100機、強襲揚陸艦が運用可能な巨大基地です。(竹下岳)

自民候補無条件容認

 「(辺野古沖の)海上基地と全ての付随設備は40年運用可能、耐用年数200年を想定して設計される」

 米国防総省が1997年9月29日にまとめた、辺野古新基地に関する報告書(「普天間基地移設のための運用上の所要と運用構想」)の一節です。仮に新基地が計画どおりに2022年に完成したとすれば、西暦2222年、すでに23世紀です。

 この報告書は当時の沖縄県が入手し、大きな衝撃を与えました。98年11月の知事選で当選した稲嶺恵一氏は新基地容認の立場でしたが、「15年使用期限」の条件をつけざるをえませんでした。

 これに対して安倍政権と仲井真県政が支える自民党候補は、無条件で基地を容認しています。文字通り、子々孫々まで、名護市民に基地との「共存」を強要する考えです。

普天間機能超える

 政府は、辺野古の新基地建設は普天間基地の「危険性除去」のための「移設」であると説明します。しかし、狙われている新基地は普天間の機能をはるかに超えています。

 普天間基地には現在、24機のオスプレイが配備されています。一昨年の配備以来、沖縄本島北部を中心に激しい訓練を行い、住民に墜落の恐怖と低周波騒音の被害を与えています。交代したCH46ヘリと比べて、午後10時以降の夜間訓練も激増しています。

 ところが、これにとどまるわけではありません。オスプレイ配備を決定した際の防衛大臣だった森本敏氏は著書(『普天間の謎』)でこう述べています。

 「普天間基地の代替施設には、有事の事態を想定すれば一〇〇機程度のオスプレイを収容できる面積がなければならず、滑走路の長さだけで代替施設を決めるわけにはいかないのである」

 米海兵隊はオスプレイ400機の配備を目指しています。事態によっては、その4分の1が辺野古に集中するというのです。

 加えて、全長257メートルにおよぶ強襲揚陸艦ボノム・リシャール(長崎県・米海軍佐世保基地所属)が接岸可能な272メートルの護岸まで計画されています。同艦はオスプレイ12機を搭載可能で、沖縄の第31海兵遠征隊(31MEU)を乗せてアジア太平洋全域に展開します。

 防衛省は辺野古の公有水面埋め立て申請書で「いわゆる軍港を建設することは考えていない」と説明していますが、沖縄県の當銘(とうめ)健一郎土木建築部長は9日の臨時県議会で、日本共産党の渡久地(とぐち)修議員に対し、「恒常的ではないがボノム・リシャール接岸の可能性はある」と認めました。

 同艦に収容されているエアクッション形揚陸艇(LCAC)が上陸できる「斜路」(スロープ)も建設されます。LCACは環境基準を超える80~90デシベルの騒音と、波しぶきによる塩害をもたらします。

 何より、ジュゴンが泳ぐ海を高さ10メートルものコンクリートで埋め尽くせば、取り返しのつかない自然破壊になります。

再編交付金は10年

 名護市長選の自民党候補は、辺野古新基地の再編交付金約260億円を受け取り、「新基地建設に伴う新たな雇用の創出と名護市経済・産業の活性化を図る」(政策ビラ)と訴えています。

 しかし、再編交付金は交付期間が原則10年、最大でも15年程度です。その代償は「耐用年数200年、オスプレイ最大100機」の巨大基地です。釣り合いがとれているとは、とても思えません。

 しかも、「260億円」という金額自体、何の根拠もありません。根拠となる米軍再編特措法を見ても、政府のさじ加減でいつでも減額・停止できます。

 沖縄県でも、那覇新都心や北谷(ちゃたん)町ハンビー・タウンのように、基地がなくなった方が雇用も税収も増えることが証明済みです。

 8日に開かれた稲嶺ススム市長の後援会の総決起大会で注目を集めたのが、県内有力企業「かりゆし」の平良朝敬CEOの訴えです。

 「200年も居座る巨大基地は沖縄の財産になりません。(新基地がつくられる)キャンプ・シュワブを沖縄に返してもらう。いまの基地従業員は243人ですが、ここにホテルを10棟建てたら、1万室で2万人の雇用が生まれます」

 海にも陸にも基地を造らせず、再編交付金に頼らない街づくりを進める稲嶺市長でこそ、名護の未来、沖縄の未来が切り開けます。