主張
政労使合意
これで本当に賃金が上がるのか
安倍晋三政権と財界、連合による「政労使会議」が合意文書をまとめました。「デフレ不況」脱却に向けて、政府が復興特別法人税の前倒し廃止など企業収益拡大のための政策をすすめ、「企業収益の拡大を賃金上昇につなげていく」という内容です。これは賃上げ合意といえるものではなく、相変わらずの企業利益優先論です。この論理こそ、この十数年、賃金が下がり続け、雇用が破壊されて日本経済が「デフレ不況」におちいった原因そのものです。賃上げの必要は認めながら、“賃下げの論理”から抜け出せない安倍政権の行き詰まりを示しています。
賃上げの保障なし
復興特別法人税の前倒し廃止で企業負担を軽くしても賃上げにはつながりません。NHKが11月に主要企業100社を対象におこなったアンケートでは、負担軽減分を人件費に充てるという企業は、たったの2社です。国際通信社のロイターが10月におこなった調査でも賃金に回すという回答が5%で、内部留保にとどめるという回答がもっとも多い30%でした。
日本経済新聞の世論調査でも、復興特別法人税廃止で企業は賃上げするかという問いに、「そう思わない」という答えが81・7%です。企業も賃上げに回す気がなく、国民も信じていない。連合も16日に「復興特別法人税の前倒し廃止は行わない」という予算編成要望を菅義偉官房長官に手渡したばかりです。そこまで破たんが明白になっているものを賃上げの決め手であるかのように政労使合意とする感覚を、異常といわずに何というのでしょうか。
9月から5回にわたって開かれた政労使会議には、見逃せない問題点があります。大企業がため込んでいる巨額の内部留保の活用に目をつぶったことです。
第1回の会議に内閣府が、議論の方向を左右する重要な資料を配布しています。企業の利益剰余金が1998年度以降急増して300兆円を超えていること、非正規雇用が3割を超えて増加し全体の賃金水準が下がっていることを示すデータです。政策統括官が会議の冒頭に説明までおこなっています。4回目の会議では、有識者による専門チームが報告書を出し、企業が内部留保を蓄積し、賃金が低下する現状は「正常とはいえない」と指摘しています。
大企業には賃上げをする十分な体力があります。内部留保の活用こそもっとも有効な賃上げ対策です。この中心問題を避けて企業を支援する減税策などは実に愚かです。賃金が上がる保障はまったくありません。
賃上げを促進するどころか合意文書には「多様な形態の正規雇用」の実現にとりくむとして、勤務地や労働時間を限定し、低処遇で解雇しやすい「限定正社員」のような不安定雇用拡大策までうちだしています。これではますます賃金が下がるだけです。
国民春闘勝利に向かって
政労使会議は、企業利益優先主義に“汚染”された安倍政権や財界のもとで、働く人の所得を増やす対策が期待できないことを示しています。賃上げは、日本経済を立ち直らせる決定打です。労働者、国民が「内部留保の一部を活用して賃上げを」という声を広げ、2014年国民春闘勝利に向けてたたかう重要性が高まっています。
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