主張

消費税増税“対策”

秘密保護法も大企業減税もか

 国民の声に逆らい秘密保護法の「成立」を強行した安倍晋三政権が先週末、来年4月からの消費税増税に対応した「経済対策」を決め、それにもとづく今年度補正予算を今週中に発表する動きです。経済の「好循環実現」をうたった「経済対策」には、不要不急の大型公共事業や大企業向けの復興特別法人税の前倒し廃止など、大企業優遇策ばかりが並びます。国民には消費税増税を押し付けながら、大企業には減税など手厚い支援を用意する―。国民の願いに反する安倍政権の姿勢が浮き彫りです。

国民には痛みばかり

 安倍政権が、秘密保護法案が参院の特別委員会で「採決」、本会議開会をめぐり対決していた先週末の5日閣議決定した総額5兆5千億円の「経済対策」は、真っ先に「競争力強化策」(1兆4千億円)をうたい、大企業応援の仕組みを次々と盛り込みました。その厚遇ぶりは、「対策」発表後ただちに経団連の米倉弘昌会長が「わが国企業の活性化に資する」と大歓迎のコメントを発表したことからも明らかです。国会の混乱のさなかに「経済対策」の決定を強行したのは、安倍政権の財界・大企業優先の態度を示すものです。

 なかでも財界がほめちぎったのは、復興特別法人税を1年前倒しで廃止し、来年3月いっぱいで打ち切ることを明記したことです。約8000億円もの減税です。「経済対策」のなかの「低所得者・子育て世帯への現金給付6000億円」をも大きく上回る額です。

 復興特別法人税は、東日本大震災の「復興財源」の確保を口実に、所得税と個人住民税の上乗せ増税とともに導入されたものです。所得税は25年間、住民税は10年間も増税が続きます。法人税増税はもともと3年間だけでした。その期間をさらに短縮する特別扱いは、“みんなで被災地をささえる”という建前にすら反します。

 震災発生から1000日をすぎても被災地の復興は進まず、避難生活の長期化など被災者のおかれた状態はますます深刻です。被災者支援を強めることこそが重要なのに、大企業がまっさきに「復興」から手を引くことに国民は到底納得できません。被災者の気持ちを文字通り逆なでするものです。

 安倍政権は“大企業減税を賃上げにつなげる”などといいますが、企業が賃上げする保証はどこにもありません。まったく道理のない大企業減税は中止すべきです。

 「対策」に盛り込まれた「東京五輪」開催を口実にした都市インフラ整備のためのムダな大型公共事業のバラマキ拡大も露骨です。莫(ばく)大(だい)な工事費でムダづかいの典型と批判されている首都圏環状道路の建設や、採算の見通しがない「国際コンテナ戦略港湾」推進は、財政を破綻させる愚挙そのものです。

消費税増税の中止こそ

 政府が週明け発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は年率1・1%の伸びと、速報値より大幅に悪化しました。国民の暮らしを立て直し、経済を再建していくことが急務です。

 消費税増税を強行し国民に負担を押し付け、消費税をほとんど負担しない財界・大企業に大盤振る舞いするのでは、消費をさらに冷え込ませ、日本経済も財政も破綻させます。4月からの消費税増税は中止し、本末転倒の大企業優遇はやめるべきです。