秘密保護法で情報隠し拡大

 国民の目・耳・口をふさぎ、政府の監視下に置く「秘密保護法」が制定されたら、「原子力ムラ」はいっそう、閉鎖的になりかねない―そんな懸念が米公文書から浮かびあがりました。

 内部告発サイト「ウィキリークス」が2011年5月に公開した在日米大使館の公電(07年2月26日付、「秘」指定=写真)によれば、核テロリズムを主題とした会合で米エネルギー省の幹部が文部科学省原子力安全課に、「核セキュリティー(安全保障)」の観点から、日本の原発施設内に出入りするすべての従業員に、憲法違反の「適性評価」を義務づけるよう求めていたことが分かりました。

 これに対して文科省側は、「いくつかの原発では従業員に対して自発的に身辺調査を行っている」とした上で、日本政府として行うことは「憲法上」困難との認識を示しました。同時に、「非公式」なら可能とも述べています。(別項)

 「秘密保護法案」では、行政機関の長が指定した「特定秘密」を取り扱う者には「適性評価」と呼ばれる身辺調査が行われることになっています。そうなれば、米国の要求に「非公式」ではなく、公然と応えて思想・信条を含めて身辺調査が可能となります。

 これまで、日本の電力会社は公安警察と一体になって日本共産党員や支持者らを特定し、排除・監視する体制をとってきました。しかし、今日、これら思想差別の多くは、憲法違反であるとして裁判で断罪されています。また、汚染水対策のずさんさなどが、原発労働者の内部告発で明確になってきました。

 一方、米国では従業員に対する適性評価は、核物質の流出やテロ防止などの理由から、合法とされています。また、日本国内で使用されている濃縮ウランの7割以上は米国産ですが、米国は日米原子力協定に基づき、「国家安全保障上の理由」から、いつでも濃縮ウランを引き揚げる権利を有しています。秘密保護法ができれば、米国が「テロ防止」などを理由に重要な原発情報を「特定秘密」に指定するよう要求するのは目に見えています。

 政府は原発施設の警備情報が「秘密」となることを明らかにしていますが、原発労働者とその家族・友人を「適性検査」で監視下におくことでいっそう原発情報を覆い隠すことが可能です。

日本政府 憲法上は回避、非公式なら…

別項 米秘密公電には、こう記されています。「文科省は、米側が原発の機密区域に立ち入る全労働者の身辺調査を求めたことについてこう述べた。いくつかの原発では自主的に従業員の調査を行っているが、全労働者を対象にするのは難しい。日本政府は憲法上、そのような調査を行うことを回避しており、日本社会でのきわめて微妙なプライバシーに関する問題がわき起こらないようにしている。しかしながら、日本政府は“非公式”なら行うことができるかもしれない」

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