「密約の暴露・追及」犯罪に
今でも秘密だらけなのに
日米同盟の秘密の闇が、さらに深いものになりかねない―。「国民の知る権利」を奪う秘密保護法が成立すれば、すでに二重三重の「秘密保護」の網をかけられている日米安保体制の真相が今以上に覆い隠されてしまいます。
日本は主要先進国の中でも情報公開制度が遅れています。
膨大な「防衛秘密」
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「なかでも外交・防衛の情報は、情報公開請求をしても本当に出てこない。秘密保護法ができれば、その中に絶対不可侵の分野ができてしまう」と指摘します。
防衛秘密については、すでに「日米相互防衛援助協定(MSA)秘密保護法」や、「防衛秘密」「特別防衛秘密」などの保護に関する訓令で厳しく統制されています。
重大なのは、「防衛秘密」は公文書の保存・作成のルールを定めた公文書管理法の適用を受けておらず、大量の文書が廃棄されていることです。
三木理事長は、「秘密指定文書を民主的に管理することで、知る権利を保障する枠組みがないままに秘密保護法が導入されれば、同法に基づく『特定秘密』指定文書も、体系的な管理から外れる可能性が極めて高い」と指摘します。
取材や告白も
「西山事件のような事例は秘密保護法の処罰対象」―。同法の国会審議を担当する森雅子少子化担当相の発言(22日の記者会見)は波紋を呼びました。
「西山事件」とは、毎日新聞の西山太吉記者が1971年の沖縄返還協定に関し、日本が返還費用を肩代わりするとの密約を入手。西山氏と外務省職員が国家公務員法(守秘義務)違反で逮捕された事件です。
この密約を含めて、日米安保体制は数多くの密約を抱えています。これまでの経緯を見ると、外交文書の発見に加え、記者の取材や関係者による告白も目立ちます。(表)
取材で外務省元高官から日本への核持ち込み密約の存在に関する証言を得た共同通信の太田昌克記者は、秘密保護法が自身に適用された場合、「『特別秘密』を入手するための『特定取得行為』を働いたとして“法の裁き”を受けないという保証は全くない」と危機感を表明しています。(『秘密保全法批判』日本評論社)
国際問題研究者の新原昭治氏は憤ります。「核密約は、広島・長崎を繰り返すなという国民の願いを裏切り、米軍の核持ち込みを容認した、国家の犯罪です。これを明らかにしようとする者を、逆に犯罪者扱いするのは、絶対に許されることではありません」
公安警察活動も「秘密」指定
違法な国民監視を隠ぺい
国が保有する軍事・外交・治安分野の広範な情報を「特定秘密」として国民の入手・閲覧を制限する「秘密保護法案」では、公安警察が収集した捜査情報や活動内容などの広範な情報も「秘密」の指定対象であることがわかりました。日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の聞き取りに対し、内閣情報調査室が明らかにしました。
同法案は、治安の分野では、テロリズムや「特定有害活動」の防止に関連して収集した情報を「秘密」に指定します。赤嶺氏は、これらに関連する指定項目として法案の「別表」にあげられている「その他の重要な情報」とは何かと質問。同調査室の橋場健参事官は「都道府県警察が収集した情報」が該当すると説明しました。都道府県警察でテロ活動などの情報収集を担当する治安機関は、事実上、警視庁公安部に代表される公安警察に限られています。
橋場参事官はまた、都道府県警察や海上保安庁など治安機関の「情報の収集整理又はその能力」も「秘密」の対象になると説明。公安警察の活動内容や情報収集の「能力」を示すような広範な情報も全て「秘密」になりえることになります。
警視庁のテロ捜査情報がインターネット上に流出した事件(2010年)では、日本に住むイスラム教徒を無差別にテロリスト扱いし、徹底した個人情報の調査や執ような尾行で人権侵害を重ねる公安警察の違法捜査の実態が発覚しました。公安警察はテロに限らずさまざまな名目で政府を批判する市民運動やデモ・集会を監視対象としており、秘密保護法案によって国家権力による違法な国民監視も国民から隠されることになります。