「しんぶん赤旗」

安倍首相所信演説―現実見ぬ「自信」はただの暴走

2013/10/16 10:59 投稿

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主張

安倍首相所信演説

現実見ぬ「自信」はただの暴走

 「この道しかない」「この道を、迷わずに進むしかない」「ともにこの道を進んでいこうではありませんか」―冒頭で3回も「この道」を繰り返した安倍晋三首相の所信表明演説は、間もなく発足から10カ月を迎える政権の成果をひけらかしたというより、「この道」以外の道を国民に示すことができない政権の行き詰まりと開き直りとでもいうべきものです。

 首相が語った「アベノミクス」や外交・安全保障での成果は、現実を反映したものではありません。現実を見ない「自信」はただの無責任な“暴走”であり、危険です。

汚染水問題もことばだけ

 その最たるものが演説のはじめで首相が取り上げた、東京電力福島第1原発事故での汚染水問題です。事故を起こした原発の建屋に放射性物質で汚染された大量の水がたまりそこへ地下水が流れ込んで、建屋からも汚染水をくみ上げたタンクやパイプからも漏れ出している問題は原発事故の深刻さをまざまざと示す問題です。政府も東電任せを改めるとはいいましたが、打開の展望は示せません。

 首相は、「食品や水への影響は基準値を大幅に下回っている」「これが『事実』だ」といいはり、「今後とも汚染水問題を全力でやりぬく」と語っただけです。ことばだけで問題が解決するなら苦労はしません。首相は9月に国際オリンピック委員会(IOC)の総会に出席したさい「汚染水はコントロールされている」と発言して猛反発を受けましたが、姿勢は変わっていません。ことばだけの決意で具体的な対策をとらないのは、まさに“暴走”そのものです。

 首相が政権発足いらい最優先すると「アベノミクス」で取り組んできた経済の再生にしても、「『3本の矢』は世の中の空気を一変させた」という一方、「景気回復の実感はいまだ全国津々浦々までには届いていません」と認めなければならないのが現実です。にもかかわらず、首相は「この道」を進むというだけです。まさに無策です。「経済の好循環」のため政・労・使の連携をといいますが、賃上げや雇用の拡大を財界・大企業に指導するとはいいません。国民に消費税増税を押し付ける一方、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすのでは、国民の暮らしも経済も立て直すことはできません。

 首相がひときわ力をこめた「現実を直視した外交・安全保障政策の立て直し」も、国連総会での演説で強調した、「積極的に世界の平和と安全に貢献する」「積極的平和主義」の焼き直しです。中身は「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設置し、「国家安全保障戦略」を策定し、「日米同盟」を基軸に「価値観を共有する国々」と連携していくなど、軍事力と軍事同盟の強化でしかありません。「現実直視」といいながら、「平和の共同体」を実現し国家間のもめごとは話し合いで解決する世界の現実を見ないのでは、役割は果たせません。

独裁政治は孤立するだけ

 政権に都合の悪い事実は見ようとせず国民の批判にも耳を傾けず、ひたすら「この道」を突き進むのは独裁政治そのものです。首相は演説の結びで直面する課題は「『意志の力』さえあればのりこえることができる」とのべました。しかし首相の「意志」だけで「この道」を突き進めば、待ちうけるのは国民からの遊離と孤立だけです。

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