主張
ウィメノミクス
女性の働く環境の抜本改善を
安倍晋三首相が9月の国連総会の演説で「アベノミクス」をもじった「ウィメノミクス」という新語を使って女性の活用を訴えました。女性の社会進出を促せば促すだけ、経済成長率は高くなるという意味だといいます。女性の積極的活用で日本の閉塞(へいそく)感を打破するとまでいいました。しかし安倍政権の女性の活用政策には、女性労働者が切実に願っている賃金や雇用形態での理不尽な差別を解消する方向がありません。女性が活躍する社会をつくるのなら、男女がともに子育てをしながら働くことができる「人間らしい労働と生活」の実現に力を注ぐべきです。
日本の恥ずべき現状
日本の女性労働者の賃金は、年間平均268万円という低さです。男性の504万円の53・2%にすぎません。しかも、これは男性の賃金が下がったからで、5年前は50・3%でした。「働く貧困層(ワーキングプア)」といわれる年収200万円以下が43%です。男女の賃金格差の大きさは、OECD(経済協力開発機構)諸国のなかで日本が突出して1位です。
世界の男女平等のランキングは、135カ国中、日本は101位(2012年、世界経済フォーラムリポート)という低さで、しかも前年より3位下がっています。日本の男女格差、女性差別の実態は、まさに世界の異常であり、恥というべきです。国連の女性差別撤廃委員会から賃金格差など女性差別への懸念が示され、是正が求められている“札付き”の日本の首相が、国連の場で何の反省もなく「女性の力の発揮」をとなえるのは空々しいというほかありません。
雇用も深刻です。正規雇用が減って、パートや派遣など待遇が悪い非正規雇用が過去最高の57・5%(総務省「就業構造基本調査」)にまで増えています。正規雇用でも、男性は総合職、女性は一般職になる雇用区分によって昇進、昇格で差別され、それが低賃金の原因になっています。総合職で働きたくても転勤や異動、長時間労働が条件となり、家庭責任を負わされている現状で両立が困難です。
「仕事と家庭が両立できない」と、妊娠・出産を機に6割の女性が退職せざるをえない状態も世界の異常として問題にされながら、いまだに改善されていません。政府は男性の子育て参加を強調していますが、男性の育児休業取得率はわずか1・89%です。子育て世代といえる30歳代の男性は、5人に1人が週60時間の長時間労働と、成果主義賃金による競争に追われて参加する時間がないのです。
安倍政権の姿勢は、こうした問題の解決どころか、少子化による労働力不足を補うために、女性を安上がりに利用しようとする財界の要求にこたえる方向です。
国民的なたたかいを
厚生労働省の労働政策審議会部会で続いていた男女雇用機会均等法の見直し論議は、労働者が強く要求していた「コース別雇用管理」の廃止など法改正が、財界側の抵抗で見送られました。しかも女性の安上がり活用をねらった勤務地などの「限定正社員」づくり、日雇い派遣の復活など労働者派遣法の改悪、労働時間の規制緩和など、働き方をますますひどくする動きが強まっています。労働時間の短縮、賃金格差是正、女性労働者の環境改善をめざし、国民的なたたかいが求められています。
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