主張

IPCC新報告

排出削減の公約を堅持せよ

 地球温暖化の進行に歯止めをかける法的枠組みの合意に向けた国連会議(国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議=COP19)まで1カ月余です。世界の科学者が参加し、新たな知見に基づいて温暖化問題の緊急性を指摘した報告が公表されたばかりです。温暖化の原因である温室効果ガスの排出削減に、各国がどれだけ真剣に取り組むかが従来にも増して問われています。大企業奉仕を強める安倍晋三政権の姿勢に、この面でも厳しい監視が必要です。

人間活動が主因

 異常といえる気象状況が頻繁に起きていることを、私たちは肌身に感じています。世界の気温上昇は直近では予想されたほど大きくないとの見方もありましたが、それも一時的な揺れにすぎないようです。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の6年ぶりの新報告は「温暖化の進行は疑う余地がなく、人間活動が主な要因である可能性が極めて高い」と指摘しました。

 温暖化の暴走を防ぐには、産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えなければならないことが、国際的に確認されています。その確保が日々困難になっています。報告は、排出削減の対策がとられなければ、今世紀末には最大4・8度の気温上昇が見込まれるとしました。削減が行われても、すでに排出されたガスの影響は長期に残ります。大胆で実効ある排出削減の緊急性を裏付けています。

 日本は、野田佳彦政権のもとで京都議定書の枠組みから一方的に脱退しました。そのうえ、鳩山由紀夫政権が国際公約した2020年までに25%削減(1990年比)するとの目標を、安倍晋三政権は「ゼロベース」で見直すとしています。削減の義務づけに反対する財界・大企業の意向に沿ったものです。温室効果ガスを大量に排出しながら、責任を果たそうとしない姿勢に、温暖化問題の国際交渉で「日本の発言力は極度に低下」と環境省が嘆くほどです。

 ポーランドで開かれるCOP19では、2020年以降の新たな枠組みが議論されます。日本政府の立ち遅れは大きく、国際交渉の足を引っ張りかねません。

 歴代政権は、温室効果ガスを出さないからとして、原発を温暖化対策の主柱にしてきました。東京電力福島第1原発の重大事故を経験している日本が、もはや原発に依存すべきでないことは明らかです。いま国内の原発は1基も動いていません。再稼働させず、エネルギー政策を根本的に見直すべきです。当面は火力発電に依拠するとしても、再生可能エネルギーの大量普及を最大限に進めなければなりません。省エネの徹底によって低エネルギー社会をめざすことも不可欠です。

日本も責任果たせ

 米国や中国をはじめとする新興国なども、排出削減の新たな努力を始めています。温暖化の進行を抑えるために、日本が応分の責務を果たすのは当然です。それに背を向け、国際的孤立の道を歩む安倍政権の姿勢は許されません。

 20年目標は今年末が提出期限です。安倍政権は原発に固執し、その点からも目標を決められないでいます。大胆な目標の必要はIPCC報告からも明らかです。20年目標は25%削減の国際公約を堅持すべきです。