主張
東京五輪2020
アスリートの願いにこたえて
2020年の夏に東京にオリンピック・パラリンピックがやってきます。引き寄せたのはアスリート(競技者)の力です。
開催都市を決める最後のプレゼンテーションでの訴えは力強く、心に響きました。「スポーツが夢、勇気、きずなを与えてくれた」「大震災の被災者とチームが一丸になれた」。スポーツで得た貴重な体験と思いが込められていました。
現実と向き合い連帯し
社会の現実と向き合い、連帯し、けん引役となる―この間、国民とアスリートとのあいだに太く築かれてきた心情です。そこに手ごたえをおぼえた多くの国際オリンピック委員会(IOC)委員が、“明日のオリンピック”を東京に託したのでないでしょうか。
56年ぶり2回目となるオリンピックの東京開催です。国の総力でやり遂げた1回目の1964年大会と大きく違うのは、スポーツが国民生活に溶け込み、世界を知るアスリートたちが躍動していることです。国民とアスリートこそ「東京2020」の担い手です。
さっそく問われるのが、近く設置される大会組織委員会の陣容です。昨年のロンドン大会の組織委員長はオリンピックで活躍した選手でした。スポーツの祭典にふさわしい構成になるかどうか、男女、障害者を問わず競技関係者の大胆な登用が求められています。
これからは国民の関心も選手強化に向けられていくだけに、スポーツ界での暴力・「体罰」の根絶が焦眉の課題になっています。開催を負託された国としてオリンピックの根本原則「スポーツを行うことは人権の一つである」との自覚を持って、競技団体がこの問題に向き合い、国民の信頼回復に努めてほしいと思います。
競技施設の整備も競技者や観客の目線での検討が迫られています。「コンパクト五輪」がうたわれていますが、老朽化した国立競技場の改築も新設予定の22の競技会場も、競技に専念でき観戦を楽しめる施設に仕上げることです。多くの人びとが活用できる後利用への考慮も大事な要件です。
懸念されているのが、競技施設が豪華さを競い、交通・通信・警備などのインフラ整備の関係費が膨張することです。大型公共事業バラマキの安倍晋三政権のもとで、早くも乱開発や浪費に拍車がかかるおそれが出ています。国民・都民の生活や福祉を圧迫し、環境を破壊するやり方は戒められなければなりません。
IOCできびしく指摘されたのが、福島原発事故と放射能汚染水の流出問題です。安倍首相はプレゼンテーションで「完全にブロックされており、安全だ」とうそぶきました。しかし、放射能汚染水の海洋流出は続いており、日本国内はもちろん国際的にも重大問題になっています。事実を認めようとしない首相の態度はあまりにも不誠実であり、多くの国民やアスリートの気持ちとはまったく相いれないものです。
安全と安心保障して
安全で安心できる国際交流を保障するのが、オリンピック開催の第一条件です。この点で、東京開催が手放しで信任されたわけではありません。いよいよ「東京2020」に向けた準備が始まりますが、このことを肝に銘じて、政府が不安の解消と課題の解決に真剣に取り組んでいくことです。
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