主張

「集団的自衛権」

改憲ねらう暴走は許されない

 安倍晋三政権が国民の批判を無視して、「集団的自衛権」の行使に向けた動きを加速しています。

 内閣の憲法解釈を担当する内閣法制局の長官を行使容認派に交代させたのに続き、行使を検討してきた有識者懇談会でも議論を本格化させる構えです。秋の臨時国会で行使に向けた、政府の憲法解釈変更を宣言するとも伝えられます。終戦記念日の靖国神社参拝など、過去の侵略戦争を反省しない日本が「集団的自衛権」行使を容認すれば、アジアと世界の反発は必至です。安倍政権の危険な企てを、やめさせることが重要です。

海外で「戦争する国」へ

 日本が直接攻撃されたわけでもないのに、アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃されることを理由に、日本が武力を行使する「集団的自衛権」の行使は、これまで歴代の政権が「憲法上、行使は認められない」としてきたものです。こうした判断は、内閣法制局の長官だけでなく首相や閣僚なども国会で繰り返し答弁し、閣議で決定した答弁書などでも確定した政府全体の見解です。

 安倍首相が今月はじめ、憲法解釈を担当する内閣法制局長官を交代させ、「集団的自衛権」行使容認派といわれる小松一郎氏を長官にすえたのは、行使の容認にふみだす布石です。外務省出身で内閣法制局の経験がなく、かつて第1次安倍政権時代の有識者会議で報告書作成を支えた小松氏の起用は、「クーデター的」と批判されました。行使加速をねらう安倍首相の魂胆は明らかです。

 安倍首相が第1次政権で設置し、第2次政権でも復活させた有識者懇談会は、すでに2008年の報告書で、「公海における米艦の防護」や「アメリカに向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」などを例に、日本が攻撃されなくても、自衛隊の武力行使を認めました。再開する懇談会は行使の対象をさらに広げ、「法理的な禁止を全面的に解除する」(北岡伸一座長代理)としています。文字通り、日本を海外で「戦争する国」につくりかえる、“亡国”の議論です。

 憲法で戦争を放棄し武力の行使を禁止している日本が、海外で戦争に参加するなどというのは、本来許されません。戦後68年日本がただの一度も外国での戦争に参加しなかったことは世界に誇るべきことです。憲法解釈を変え戦争の道を突き進むのは言語道断です。

 政府は「個別的自衛権」同様、「集団的自衛権」もすべての国に認められた権利だといいますが、国連憲章にある「集団的自衛権」の規定は、国連の統制を受けずに軍事行動ができるようアメリカが持ち込んだものです。アメリカのベトナム侵略戦争などが「集団的自衛権」の口実でおこなわれました。他国への軍事介入の論拠に使われてきた規定をもちだして、憲法違反の武力行使を正当化するのは、二重三重に大間違いです。

憲法守り抜いてこそ

 日本国憲法は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」とのべるとともに、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」「安全と生存を保持しようと決意した」としています。

 世界でもいま、戦争ではなく平和的・外交的努力で問題を解決することが流れです。憲法を生かしてアジアと世界の平和に貢献する道をこそ、日本は進むべきです。