主張

加速する生活保護改悪

「生きる土台」崩す暴挙許せぬ

 厚生労働省が生活保護大改悪に向けた二つの報告書案を公表しました。生活保護を受けにくくする方針を鮮明にするとともに、受給者の保護費を削減する方向を強くにじませています。“相乗効果”によって改悪を加速し、貧困に陥った国民の「生きる権利」を侵害する重大な内容です。昨年の総選挙で「生活保護費1割削減」を掲げた自民党・安倍晋三政権の社会保障改悪の具体化の第一歩です。国民に犠牲を強いる暴走をストップさせることがいよいよ重要です。

新「水際作戦」の危険

 16日に公表された二つの報告書案は、厚労相の諮問機関である社会保障審議会の「生活困窮者支援」特別部会と、生活保護基準部会がそれぞれまとめました。

 いずれの案も、消費税増税と社会保障の一体改悪を推進してきた民主党政権で検討が進められてきたものですが、社会保障制度の基本を“自己責任”とうたう自民党政権の復活によって、生活保護制度改悪にむけ、一段とアクセルを踏み込もうというものです。

 「生活困窮者支援」特別部会の報告書案は、部会委員からも「可能な限り生活保護制度を利用させない運用が危惧される」と強い異論が出されるほど“新たな水際作戦”の道具になりかねない事項が列挙されました。

 「生活保護の一歩手前の経済的困窮者」に、まず「就労」を優先させる仕組みを導入するとしています。これは昨年初めに発覚した札幌市の姉妹孤立死事件が、福祉窓口が「まず就労」を求めて生活保護を申請すらさせなかったことにより引き起こされた悲劇になんら学ぼうとしない無反省な姿勢です。受給者に執ように「就労」を迫ることは精神的に追いつめ、ますます就労から遠ざけ、自立への逆効果にしかなりません。

 扶養能力のある親族が受給者の扶養を拒否する場合の親族の説明責任の強化を盛り込んだことは重大です。いまも「親、兄弟に知られたくない」と生活保護申請をためらう人が少なくないのに、その事態を悪化させるものです。「締め出し」を前面に打ち出した報告書案は撤回すべきです。

 基準部会の報告書案は、生活保護のうち光熱費や食費など「生きる」根幹部分を削減する意図のもと、保護を受けていない低所得世帯の生活費水準と、生活保護受給世帯の生活費水準を比べる方式を採用し、生活保護世帯の扶助費が一般低所得世帯を上回るケースがあることを上げました。一方で世帯や年齢構成によっては保護世帯の方が下回る場合もあり、カットに「慎重」さも求めました。

 田村憲久厚労相は「保護費10%削減」を表明していますが、基準部会報告書案は削減の理不尽さを浮き彫りにしています。生活に不可欠な生活扶助費の削減は断念すべきです。

くらし支える政策こそ

 不要不急の巨大公共事業に莫大な予算をつぎ込む一方で、“財政が大変”と社会保障切り捨てを推進する安倍政権には一片の道理もありません。「就労」の必要性をいうなら現在深刻化している電機産業を中心とする大規模リストラをやめさせ、雇用の確保を最優先の政策をとるべきです。「締め出し」「削減」の道でなく、「くらしの安全網」を保障する生活保護制度の充実が急がれます。