主張
安倍政権経済対策
国民の願いに応える立場ない
「深刻な不況を打開し、景気をよくしてほしい」―国民の切実な願いに照らせば、安倍晋三政権が決定した「経済対策」は、“落第”の一語につきます。
10兆円を超す財政支出で、国と地方合わせ総事業費で20兆円にのぼる異例の対策の中心は、公共事業の追加です。不要不急の公共事業拡大で財政をいっそう悪化させます。財界の要求に応えた「成長戦略」や規制緩和も、大企業の収益を伸ばすための対策が最優先です。不況打開のカギをにぎる、国民の暮らしを応援し所得と消費を増やす方策は示されていません。
従来型の対策復活させた
「対策」には、「強い経済」を取り戻すだの、金融緩和と財政政策と成長政策を「三本の矢」にするだのと、安倍首相の持論がちりばめられています。しかし、10・3兆円の財政支出の約半分5・2兆円を公共事業に注ぎ込んでいることが示すように、対策の中身に新味はありません。公共事業をばらまき、無駄な道路やダムをつくりながら景気もよくせず、財政を破綻させた自民党政権のやり方の復活です。安倍首相が「取り戻す」といったのはこのことだったのか。
公共事業の中身が問題です。東日本大震災からの復興や老朽化した道路やトンネルなどの補修、学校の耐震化などは、誰が政権を担当しても必要なものです。もちろん、「流用」は許されません。「対策」が「国際競争力強化」の名のもとで、大都市圏環状道路や国際コンテナ戦略港湾の機能強化などの推進を掲げていることは重大です。文字通り、不要不急の大型公共事業を復活させかねません。
公共事業の財源は建設国債の増発でまかないます。国の借金を膨らませ、財政悪化をいっそう深刻にするものです。15日に決定する予定の補正予算案では、5兆円を超す国債の増発を盛り込みます。大手のゼネコンなど一部の大企業をもうけさせるだけの大型公共事業で財政を悪化させ、そのつけを消費税の増税で国民に押し付けるのは絶対に許されません。
「対策」が、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すことを明記し、「研究開発プロジェクト」や「国際競争力強化に資するインフラ整備」を推進し、大企業優先の「経済成長」という姿勢を鮮明に示したことも見過ごせません。
「世界で一番企業が活動しやすい国」とは何事か。いまでさえ労働者に対するリストラや下請けいじめなどやりたい放題の大企業に、もっと身勝手を認めようというのか。安倍首相は記者会見で、企業がもうければ雇用や賃金もよくなると主張しましたが、それこそ破綻した「トリクルダウン(したたりおちる)」政策の焼き直しです。大企業がどんなに大もうけし内部留保をため込んでも、雇用も賃金も改善しなかったことは国民がよく知っています。大企業への異常な肩入れはもうごめんです。
暮らしと家計に活力を
国民が不況に苦しみ、日本経済が長期間低迷しているのは、国民の所得が増えず、消費が伸び悩んでいるからです。政府がてこ入れするなら大企業ではなく、国民の暮らしにこそおこなうべきです。
安倍首相の経済対策を「アベノミクス」といいますが、その正体は大企業応援です。国民の暮らしと家計に活力をもたらす政策に転換させることがいよいよ重要です。