主張
いじめ防止推進法
問題ただし、とりくみを前に
閉会した通常国会で自民、公明、民主、維新、みんな、生活が共同で提出した「いじめ防止対策推進法案」が可決、成立しました。
衆院・参院とも、わずか4時間の審議で、関係者からの意見聴取もありませんでした。日本共産党は「法案には原則的な問題で、見過ごせない点が含まれている」と反対し、関係者の意見も聞き法案を作り直すことを求めました。
厳罰化は逆効果
法律には、子どもにいじめ禁止を命じ、いじめる子どもは厳罰で取り締まろうという仕組みがあります。取り締まり的対応がふえ、いじめの解決に欠かせない子どもと先生の信頼関係を壊してしまえば、本末転倒です。厳罰化は、いじめを行う子どもの鬱屈(うっくつ)した心をさらにゆがめ、人間的に立ち直る道を閉ざしかねません。
また、法律は学校に、道徳教育中心のいじめ対策を求めています。しかし、いじめ自殺がおきた大津市立中学校は市内で唯一の国の「道徳教育推進指定校」でした。同市の第三者委調査報告書は「道徳教育の限界」を指摘し、「むしろ学校現場で教師が一丸となった様々な創造的な実践こそが必要」と報告しています。市民道徳の教育は大切ですが、それは自主的に行われるべきもので、上から押しつければかえって逆効果です。
日本弁護士連合会の意見書は、法律の問題点を二十数点にわたって指摘しています。法律には少なくない問題があり、機械的な運用をさける必要があります。
学校と社会がいじめと向き合い、法律の問題点もただしながら、とりくみを前に進めることを訴えます。中心は、学校ではどんなことより子どもの命が大切だという、子どもの安全への深い思いを確立することです。いじめをけんか・トラブルと同列に扱うことを繰り返してはなりません。子どもを深く傷つけ、いじめの温床にもなる体罰の一掃も急務です。
いじめに真剣に対応する学校等の「様々な創造的な実践」を広げましょう。そのために厳罰化や道徳教育中心主義で学校を硬直化させてはなりません。法案審議では、日本共産党議員の質問に提案者は「さらに厳罰を与える意図はない」「いじめを行った子どもたちの気持ちや悩みを理解しようとする立場にたって対応する」と答弁しました。学校の実践についても道徳以外の「いろいろな措置の組み合わが重要」と述べました。
秋以降、法律にもとづき全国の学校に、専門家も加わるいじめ対応の「組織」が置かれます。「組織」を形式ばらず、教職員の集団的対応や自由で創造的な実践を鼓舞するものにする必要があります。
法律は、遺族の「知る権利」も不十分です。法律の運用に際し、隠蔽(いんぺい)のない、「知る権利」を保障できるガイドラインをつくることを国に強く求めます。
法律は、国や自治体のいじめ対策の予算措置の努力を定めています。ただちに来年度予算で、保健室の先生の複数配置など関連予算を思い切って増やすべきです。
解決に力を尽くして
日本共産党は昨年、提案「『いじめ』のない学校と社会を」を発表し、各地でシンポジウムを開き、いじめの相談にもあたってきました。今後とも多くの人々と手をとりあい、いじめ問題の解決に力を尽くす決意です。
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