「しんぶん赤旗」

「規制改革」答申―立ち向かう方向が違っている

2013/06/07 11:35 投稿

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主張

「規制改革」答申

立ち向かう方向が違っている

 政府の規制改革会議が答申を出しました。経済再生のための「阻害要因の除去」が大きなテーマで、エネルギー・環境、保育、健康・医療、雇用、創業の5分野の「改革」を提起しています。なかでも重大なのは、財界の要望を受け入れ、雇用ルールの破壊を打ち出したことです。「正社員改革」の名のもとに勤務地や職務などを限定して働く「限定正社員」ルールの確立や、労働者派遣制度の見直しなどです。答申は、近く閣議決定される「成長戦略」に反映されますが、財界中心でものを考える古い自民党型の発想では「デフレ不況」を深刻にするだけです。

ひたすら財界の要求で

 安倍晋三首相は内外情勢調査会の講演で「規制改革こそ成長戦略の1丁目1番地」「どのような岩盤にもひるむことなく立ち向かっていく」と強弁しました。完全に問題を取り違えています。いま政府が立ち向かうべき岩盤は、内部留保をたっぷりため込んで、労働者の賃金引き上げ、安定した雇用の確保、下請け単価の引き上げなどに還元することをかたくなに拒んでいる大企業ではないのか。国民の多くの実感です。雇用の破壊ではなく、人間らしく働くルールの確立こそ経済を回復の軌道にのせる確かな道です。

 「限定正社員」の雇用ルールの整備を検討するという提起は、問題外です。勤務地や職務、労働時間を特定した契約を結び、無期雇用で働く形態ですが、「限定」だということで賃金が安く抑えられ、企業の都合で勤務地や業務がなくなれば解雇です。そのルール整備は、雇用をますます不安定化させるだけです。

 日本の正社員は、残業が青天井の長時間労働、家庭の事情を考慮しない転勤、出向、グローバル展開に応じた海外勤務など、まさに24時間働く「無限定正社員」です。これが企業が求める正社員像です。これに耐えられない労働者が「限定型」にされて賃下げ、やがて解雇になるのです。

 「正社員改革」で最も重要なのは、「限定型」のルールづくりではなく、世界でも異常な「無限定」な正社員の働き方を是正することです。労働時間の上限を法律で規制し、休日もしっかり取れるようにし、過労死やメンタル疾患がなく、仕事と家庭を両立させて人間らしく働ける状態をめざすべきです。こうすれば雇用も増えます。

 規制改革会議の答申は、この方向とはまるでかけ離れ、これでもかこれでもかと財界の要求を受け入れた内容です。労働時間に拘束されず、残業手当もまともにもらえずに働く「企画業務型裁量労働制」の拡大、正社員が担うべき恒常的な仕事に派遣労働者を無限に導入できるようにする「常用代替防止」規制の撤廃など、あまりに一方的で、政府の機関がやることとは思えません。

人間らしく働くルールを

 日本共産党は、このような労働法制の規制緩和に断固として反対します。財界の利益拡大のための「成長戦略」ではなく、大企業の内部留保の一部を賃上げや非正規雇用社員の正社員化のために使って働く人たちの所得を増やすこと、サービス残業など無法なただ働き労働を根絶すること、人権を無視した「退職強要」をやめさせることなど人間らしく働くルールをつくることに全力をあげます。

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