生活保護改悪は、すべての国民への攻撃――廃案のために、最後まで力をつくそう

衆院議員面会所 志位委員長の訴え

 衆院厚生労働委員会で生活保護法改悪案の可決が強行された31日、日本共産党の志位和夫委員長が衆院議員面会所での抗議行動で行った発言は次の通りです。

申請を断念させ追い返す「水際作戦」の合法化は、絶対に許せない

  みなさん。お疲れさまです。

76ed0cdc504fcf187bfa72dfec60544f26a3ff7f まず、わずかな審議で、しかも、朝日生存権訴訟の朝日健二さんを参考人としてお呼びして、生活保護のそもそもとは何なのかということをお聞きしたその日に、自民、公明、民主、維新、みんなが採決を強行したことに対して、みなさんとともに断固として抗議の声をあげたいと思います。(拍手)

 今度の改悪案の最大の問題というのは、生活に困窮された人が生活保護の申請を行うときに、書類の提出を義務づけるというところにあります。すなわち、これまで違法だった「水際作戦」を合法化するところに、最大の問題があります。

 これまでも、生活保護行政の現場では、保護を求めてきた人を単なる「相談者」として扱い、申請を断念させて追い返す「水際作戦」が横行してきました。「必要書類がそろっていない」ことを理由に申請を断念させることは、「水際作戦」の常套(じょうとう)手段として行われてきました。

 しかし、現行制度では、保護申請は口頭でも可能とされ、行政はそれに応じる義務を負っています。不当な門前払いが発覚すれば、違法行為として断罪され、行政も指導せざるを得ない仕組みになっています。今回の法改悪は、この「水際作戦」を合法化するものであり、絶対に許すわけにいかないものであります。

 民主党は、採決前の局面で「修正」案というのを出してきました。しかし、それは、書類提出について、「特別の事情があるときはこの限りでない」という文言をつけくわえただけのものです。これには何の意味もありません。「特別の事情」というのは役所が判断するわけですから、何の歯止めにもならない。そういう姑息(こそく)な「修正」を施して強行してしまった。本当にこれは罪が重いといわなければなりません。

 この間、生活保護の申請を門前払いされた人が餓死・孤立死に追い込まれ、遺体となって発見される事件が相次いでいます。病気で失業した娘と要介護の母親が、(生活保護)バッシング報道を見て、「生活保護は受けられない」とあきらめ、心中を図るという事件もおこっています。改悪法案は、こうした事態をさらに広げるものであり、絶対に容認できるものではありません。

不正受給を口実にした法改悪――国民に分断を持ち込む卑劣な罠を拒否しよう

 政府や自民党は、不正受給の存在を制度改悪の口実にしていますが、政府の統計でも生活保護の不正受給(額)は全体の0・5%にすぎません。

 しかも不正受給といわれている人々のなかでも、たとえば子どもさんが高校生になってアルバイトを始めた、その届け出をうっかりやっていなかった、そういう本当のミスも少なくなく、悪質なものはごく少数にすぎません。

 それを、あたかも全体が不当なことをやっているかのようなバッシングをやって、受給権を奪う。国民の間に分断を持ち込み、互いにたたき合わせて、その権利を奪うというやり方は本当に許すわけにいかない。そうした卑劣な罠(わな)を断固として拒否しようではありませんか。この問題は、生活に困窮されている方々だけの問題ではありません。全国民の問題、憲法25条の権利にかかわる大問題であります。そういう立場で力をつくしていこうではありませんか。(拍手)

「生活保護の申請を簡素化」すべき――国連からの勧告

 みなさん。日本の生活保護で早急に解決が迫られているのは、収入が最低生活費未満の人が生活保護を受けていない―捕捉率があまりに低いという問題です。捕捉率は日本では2割程度しかありません。ドイツの6割、イギリスの5~6割、フランスの9割と比較して、2割というのはまったく異常な実態というほかありません。

 今年5月、国連社会権規約委員会から日本政府に出された「総括所見」は、「恥辱のために生活保護の申請が抑制されている」ことに「懸念」を表明し、「生活保護の申請を簡素化」し、「申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとる」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手だてをとることを勧告しています。これこそ日本がいま取り組むべきことではありませんか。

 改悪法案をめぐっては、急速な運動と世論の広がりを受け、メディアのなかにも批判的論調が出始めています。たたかいはこれからです。たたかいの舞台は、参議院に移りますが、廃案をめざして、最後までともに頑張りぬくということを申し上げて、私のあいさつといたします。(拍手)