主張

TPP

大企業は栄えても、国民は…

 環太平洋連携協定(TPP)は大企業の国境を越えた事業展開を後押しするものです。多国籍企業にとっては海外投資を拡大し、利益を伸ばす成長のチャンスにつながります。財界がTPPに大きな期待をかけるのも、そのもとで行われる「ルールづくり」が大企業の海外展開を左右するからです。日本経済の成長を保証するわけではありません。TPPは国民の生活基盤を脅かし、「デフレ不況」を促進しかねません。

進出先での活動の自由

 安倍晋三政権はTPPへの参加を成長戦略の柱にしています。TPPは「アジア・太平洋地域の活力を取り込む」もので、少子高齢化で活力が失われる日本経済に不可欠だといいます。漠然とした物言いで期待を持たせても、その顔は大企業だけに向いています。

 グローバルに事業展開する大企業にとって重要なのは、進出先での活動の自由を確保することです。そのため、TPP交渉のルールづくりは多方面にわたり、関税とともに知的財産、政府調達、競争政策、投資、環境、労働など21の分野で行われています。

 経団連はその通商戦略で、企業が研究・開発、製造、販売、人員の移動、資本の移転や利益の回収などを「わが国を含め複数の国の国境を越えて円滑に行えることが重要」だとし、「これに資する新たな通商ルールを構築しなければならない」といいます。TPPを重視するのも「わが国企業が強みを活(い)かせるルールを実現する」ためだと主張します。

 コンビニなどの小売業界はいまアジア地域への進出を進めています。成長著しいアジア各国で、国民の購買力が高まっているからです。ベトナムやマレーシアでは外国企業の活動が制限されていることから、TPPでの制限撤廃に期待をかけています。

 2013年3月期決算で自動車各社の好調ぶりが目立ちます。急激な円安を追い風に、利益を大きく伸ばしています。しかし、それで海外での生産拡大にブレーキがかかったり、国内生産が増えるという見方はありません。

 トヨタ自動車は先月、米市場向け高級車の生産を日本から米国に移すと発表しました。「為替変動の影響を減らすため」(豊田章男社長)といいます。市場に対応できる生産体制こそ重要なのです。

 大企業が海外で利益をあげても、日本で国民にプラスになるわけではありません。むしろ、企業の海外進出を一段と促進し、国内での失業増や労働条件の悪化に拍車がかかる危険があります。

 TPPをテコに海外進出を加速する大企業の姿勢は、日本経済のゆがみを浮き彫りにしています。「グローバルの市場で自らの目先の利益をあげることに振り回され、日本経済をどうたてなおすかについての責任をまったく放棄」(日本共産党の志位和夫委員長)したものだからです。

農業や地域経済を破壊

 「例外なき関税撤廃」のTPPが日本農業に壊滅的打撃を与えることには、議論の余地がありません。食品関連産業も掘り崩し、いたるところで地域経済が破綻に追いやられます。多国籍企業の利益を確保するためのTPPは百害あって一利なしというべきです。広範な国民の手で、TPP交渉から撤退させるときです。