共通番号制導入に巨費見込むが
ずさん さんざん IT予算
共通番号制導入を狙う政府が推進するインターネットでの「電子申請システム」。導入後にほとんど使われず廃止になったり、システム開発が頓挫する例が少なくありません。政府が毎年1兆円を投じる「IT関連予算」のずさんな実態が浮かびあがってきます。(矢野昌弘)
パスポート1枚1600万円 ?!
ネット申請 利用者少なく廃止も
旅券(パスポート)1枚を発行するのに行政側の経費が1600万円(外務省の電子申請旅券システム)。内閣府のオンライン申請1件につき374万円。新車登録のための自動車保有の一括手続き1件につき134万円…。
電子申請システムの維持に要した経費を利用実績で割ると、1件あたりの金額が、とんでもなく割高なものが少なくありません。
2000年のIT基本法にはじまった「電子政府の推進」。各省庁で、窓口での行政手続きをオンラインで利用可能にするため、システムの導入を図ってきました。
ところが結果はさんざんなものです。政府は昨年、電子申請で利用できる6973の手続きのうち、利用率が低い3488の廃止を決めました。そのうちの5割超が3年間で、1度も使われていませんでした。
最近の失敗例では、特許庁の基幹系システムの更新にむけて55億円の開発費を投じたものの、昨年、開発を断念しています。巨費を投じた住民基本台帳システムも、費用対効果に疑問の声があがっています。
IT調達は、必要性が定かでないのに巨額の費用を投じる新たな大型公共事業、「ITハコモノ」とも言われています。
造った後も多額の費用
その「ITハコモノ」の典型が、現在、衆院で法案審議中の「共通番号(マイナンバー)制」です。政府は導入費用に3000億円、稼働費用に年間300億円を見込んでいます。開発はこれからはじめるため、難航すれば、さらに費用が膨らむ可能性が大です。
自治体のコンピューターシステムに詳しい自治体職員は「今でも5、6年おきにシステム更新が必要で、数千万円から億円単位になる。パソコンも3~5年で更新が必要で、IT調達は終わりなき投資だ。共通番号制をやると、自治体によってはシステム更新を強いられるところもあるだろう。この法案はIT業界の仕事づくりという側面を強く感じる」と指摘します。
また、国会審議で政府は、費用対効果について「数値化が難しい」(甘利明経済再生担当相)と明らかにしていません。
日弁連情報対策委員会委員長の清水勉弁護士は「普通のハコモノは造ったら終わりだが、このITハコモノは造った後も費用がかかり続ける。お金を出す価値のある事業なのか」と批判します。
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