主張
武器貿易条約
実効性を持たせるのが重要だ
国連総会が2日開いた本会議で、通常兵器の国際取引を規制する「武器貿易条約」を盛り込んだ決議を154カ国の賛成で採択したことに、条約の締結を求めてきた国際人権団体などから歓迎の声が相次いでいます。
通常兵器を規制対象にした条約は初めてです。潘基文(パンギムン)国連事務総長は「世界の人々にとっての勝利」とのべました。長い間の国際社会のとりくみを評価したものです。武器使用による犠牲をこれ以上増やさないために条約の発効を急ぐとともに、最大の武器輸出国であるアメリカなど輸出大国への働きかけがとくに重要です。
長い間の努力が結実
武器貿易条約は、国際基準をつくることで国際的な武器取引を管理しようとするものです。武器輸出は野放し状態です。通常兵器の貿易額は年々増加し、その額は2012年だけで数千億ドルともいわれます。膨大な武器の流入で毎年50万人もの人々の命が奪われています。国家間の武力紛争で命が奪われているだけでなく、政府の弾圧や犯罪などでも武器が使われ多くの犠牲者をだしています。
こうした悲惨な状態をなくすために1990年代後半にはじまったのが条約によって武器の国際取引を規制しようというとりくみです。長い間の努力で得た条約です。それだけに条約を実効あるものにすることが重要です。
条約は規制対象として、戦車、武装戦闘車両、大砲、戦闘機、攻撃ヘリコプター、軍艦、ミサイルおよびその発射装置、それに小火器を明記しています。国連安保理が決めた武器積み出し禁止や国際人道法などに違反する場合は輸出が規制されます。それ自体当然です。しかし一方で、条約の禁止規定に違反するかどうかの判断を武器輸出国にまかせています。武器輸出で大もうけをしている輸出国まかせで厳格な規制を求める声に応えることができるかどうか、厳しい監視が欠かせません。
条約は50カ国が批准したのち90日で発効します。国連総会決議に賛成した154カ国の政府を説得し、早期に批准するよう働きかけることが必要です。とりわけアメリカの批准が重要です。条約を実効性あるものにするうえで不可欠だからです。
アメリカは世界170カ国以上に武器を輸出している最大の武器輸出国です。世界各地に武器を輸出し、多くの人々の命を奪い傷つけている責任は重大です。
最大の武器輸出国であるアメリカが批准すれば、国連総会決議に棄権したロシアや中国をはじめとした23カ国の批准を後押しすることにもつながります。武器貿易条約を実効あるものにしていくために、アメリカをはじめ国際社会は力をつくすべきときです。
憲法と武器禁輸原則で
日本はこれまで日本企業が製造した武器で他国民の命を奪ったことはありませんでした。憲法9条と外国への武器輸出を禁止した「武器輸出三原則」があったからです。にもかかわらず政府は「三原則」を見直し、禁輸政策を投げ捨てようとしています。それは武器輸出に反対し、禁止を求める世界の人々の根本的要求にそむくものです。
政府は「三原則」見直しを撤回し、武器貿易条約を実効あるものにするため力をつくすべきです。
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