デフレ不況打開へ賃上げし消費税増税中止を
TPP・原発再稼働・沖縄米軍基地
衆院本会議 志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長が5日の衆院本会議で行った安倍晋三首相に対する代表質問は次の通りです。
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
大震災から2年――「被災者と心を共有」する復興政策を
まもなく東日本大震災から2年目の3月11日を迎えます。しかし、甚大な被害を被った被災自治体からは、「2年たてば状況は変わっているはずと思い、踏ん張ってきましたが、まだ現場は壊れた建物の解体作業をしており、ガレキも山積みです」という実態が寄せられています。被災者からは「つらい期間があまりにも長すぎる」「再建の意欲がなえてきた」という痛切な声が寄せられています。
復興をすすめるにあたって、いま何よりも政治に求められているのは、こうした深刻な実態を丸ごとつかみ、「被災者と心を共有する」という姿勢をつらぬくことではないでしょうか。この立場から、私は、緊急にただすべき政府の姿勢の問題点について提起します。
支援が必要な人・地域がある限り、支援策を打ち切らない――これを大原則に
第一は、あらゆる支援策に期限がついているという問題です。
先の見通しが持てないのに、災害救助法にもとづく仮設住宅や見なし仮設の期限が、来年度から1年ごとの延長となっていることが、被災者の不安を広げています。
政府は、昨年9月末、被災者の医療・介護の減免措置を打ち切りました。生活も生業(なりわい)も再建のめどがたたず、不安といら立ちがつのっているときに、一方的に支援を打ち切ったことが、どんなに被災者の心を傷つけ、どの施策もいつ打ち切られるか分からないという国への不信を広げたか、はかりしれません。
医療・介護の減免措置をただちに復活させるとともに、あらゆる支援策について、支援が必要な人、地域がある限り、拡充することはあっても、絶対に打ち切ることはせず、生活と生業の再建を最後まで支援し、被災者とともに歩む――このことを約束し、政府の支援策の大原則にすえるべきではありませんか。答弁を求めます。
これまでのルールを現場に押しつけるのでなく、現場にルールをあわせよ
第二は、「元の場所に、同じものをつくらなければ支援しない」という杓子定規な「復旧」の押しつけが、復興の重大な足かせとなっているという問題です。
津波をかぶった海岸沿いの道路の整備は復興交付金の補助対象とするが、高台移転を考えて山側に道路の整備をしようとしても補助対象としないという事態がおこっています。もともと曲がりくねっていた道路を、まっすぐに直した方がお金がかからないのに、元の蛇行したままでないと補助対象としないという事態もおこっています。
これまでのルールを現場に押しつけるのではなくて、現場にルールをあわせる。この立場での根本的な見直しが必要ではありませんか。総理の答弁を求めます。
TPP――「聖域なき関税撤廃」を誓約させられたのが日米共同声明ではないか
TPP(環太平洋連携協定)参加につきすすむ総理の姿勢に、「公約破りのTPP参加は許せない」「自民党も民主党と何ら変わらない」という怒りの声が全国で広がっています。
「『聖域なき関税撤廃』は前提でないことを確認した」――国民を欺くもの
総理は、施政方針演説で、「TPPについては、『聖域なき関税撤廃』は、前提ではないことを、先般、オバマ大統領と直接会談し、確認いたしました」とのべました。しかし、これは国民を欺くものであります。
日米首脳会談を踏まえて発表された「日米の共同声明」の冒頭には、TPP交渉に参加する場合には、第一に、「全ての物品が交渉の対象となること」、第二に、「2011年11月12日にTPP首脳によって表明された『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された包括的で高い水準の協定を達成していくこと」を、両政府が「確認する」と明記されています。
それでは2011年11月の「TPPのアウトライン」には何と書かれているか。「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する」――関税と非関税障壁の撤廃がTPPの原則だと書かれています。
さらに同時期に外務省がまとめた報告書は、「TPP協定交渉においては、高い水準の自由化が目標とされているため、従来我が国が締結してきたEPA(経済連携協定)において、つねに『除外』または『再協議』の対応をしてきた農林水産品(コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等)を含む940品目について、関税撤廃を求められる」と明記しています。
すなわち、日米共同声明で確認されたのは、TPPに参加する場合には、全ての物品を交渉の対象とし、関税と非関税障壁を撤廃し、「高い水準の協定」――すなわち、これまで「聖域」としてきた農林水産品の関税を撤廃する協定を「達成」することにほかなりません。
総理、“「聖域なき関税撤廃」が前提ではないことが確認された”どころか、「聖域なき関税撤廃」を誓約させられたのが、日米共同声明ではありませんか。
国民皆保険、食の安全安心も含め、自民党の公約を保障する発言はあったのか
くわえて、国民皆保険制度や食の安全・安心を守るなど、自民党が総選挙で掲げた「関税」以外の5項目に関する公約については、日米首脳会談で一方的に説明しただけではありませんか。オバマ大統領から5項目を保障する発言があったのか否か、しかと答弁願いたい。
国民を欺き、公約を裏切り、農業、医療、食の安全をはじめ、国民生活と日本経済を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡す、TPPを推進することは絶対に許されるものではありません。日本共産党は、交渉参加をきっぱり断念することを強く求めるものであります。
賃上げと安定した雇用の拡大――政府がいまなすべきことは何か
賃上げと安定した雇用の拡大は、労働者の切実な願いであるとともに、デフレ不況打開のための最大のカギとなっています。
私は、総理に二つの点を提起するものです。
経済界に「内部留保の一部を賃上げに活用せよ」と正面から要請せよ
第一は、政府として経済界にたいして賃上げの働きかけを本腰を入れておこなうことです。
総理は、この間、経済3団体首脳と会談し、従業員の報酬引き上げを要請していますが、経済界からの回答は、「企業収益が回復すれば、いずれ賃金の上昇につながる」という事実上のゼロ回答でした。
しかし、大企業は260兆円もの内部留保をため込み、その1%程度を取り崩すだけで、8割の大企業が月額1万円の賃上げを実施できる力をもっています。「内部留保の一部を賃上げに活用せよ」と堂々と正面から経済界に要請すべきではありませんか。答弁を求めます。
政府として賃上げ促進政策の実行を――“賃上げ目標”こそもつべき
第二は、政府として賃上げ促進政策を実行することです。
厚生労働省の「労働経済白書」は、需要不足=デフレの生じている最大の要因は所得の低下であり、「それは主に非正規雇用者の増加によるもの」だと分析しています。そうであるならば、非正規雇用の増大をもたらした歴代自民党政権による労働法制の規制緩和路線を抜本的に転換し、労働者派遣法の抜本改正、パート労働法の改正など、正社員化への流れをつくるべきではありませんか。
さらに総理は、中小企業への大規模な支援とセットで最低賃金引き上げに大胆に取り組むべきだというわが党議員の提起にたいして、「重要な指摘であり、研究しなければならない」と答弁しました。そこまで認めたのであれば、最低賃金引き上げを本腰を入れて実行することを、この場で明言していただきたい。
総理の「無制限の金融緩和」宣言を機に、急激な円安で輸入食料品、灯油、ガソリンなどが値上がりし悲鳴があがっています。こんなやり方で「2%の物価上昇」をめざすとすれば、生活必需品の高騰は必至となります。賃金が上がらないのに物価だけが上がる最悪の事態を招きかねません。政府として目標を持つというのであれば、“賃上げ目標”こそ持つべきではありませんか。答弁を求めます。
消費税増税――家計と経済に与える深刻な打撃をどう認識しているのか
増税の論拠は総崩れ――いったい何のための消費税増税か
総理は、施政方針演説で、「暮らしの不安に一つひとつ対応する」といいながら、国民の最大の不安の一つである消費税増税について一言も触れませんでした。なぜでしょうか。参議院選挙までできるだけ議論を避けて選挙をやりすごそうという思惑があるとしたら、これほど国民を愚弄(ぐろう)するやり方はありません。
安倍政権の経済政策のもとで、消費税増税の根拠は、いよいよ総崩れとなっています。
「社会保障のため」という口実は、生活保護の大幅削減を突破口に、介護、医療、年金、保育など、すべての分野で給付削減と負担増が計画されるもとで、すでに崩れ去っているではありませんか。
「財政再建のため」という口実も、大都市環状道路や国際コンテナ戦略港湾など無駄と浪費の巨大公共事業のバラマキが復活するもとで、もはや通用しないとは考えませんか。
いったい何のための消費税増税か。国民に分かるように説明されたい。
デフレ不況に苦しむ日本経済を奈落の底に突き落とすもの
わけても総理にただしたいのは、消費税増税が家計と経済に与える深刻な打撃をどう認識しているかということについてです。
消費税率が10%になれば、政府の試算でも、年収500万円のサラリーマン4人世帯で年間11・5万円の負担増となります。他の増税や社会保険料負担増、児童手当削減等を含めれば1カ月分の給与に相当する31万円もの負担増を強いられます。この4年間で見ても、労働者の平均年収が21万円も減っているもとで、さらに31万円と1カ月分の給料を奪いとる負担増が押しつけられて家計が耐えられるとお思いでしょうか。
1997年の消費税増税のときには、いまとは逆に4年間で平均年収は21万円増えていました。それでも増税が家計の底を突き破り、大不況の引き金を引く結果となりました。
働く人の所得が減り続けているもとで97年を上回る総額13・5兆円もの大増税を強行すれば、デフレ不況に苦しむ日本経済を奈落の底に突き落とすことになることは、火を見るよりも明らかではありませんか。国民生活と日本経済にはかり知れない打撃を与える消費税増税はきっぱり中止すべきであります。答弁を求めます。
原発再稼働――「新安全基準」は「安全神話」の再生産ではないか
総理は、施政方針演説で「安全が確認された原発は再稼働します」と、原子力規制委員会が7月にも制定するとしている「新安全基準」にもとづいて原発再稼働を強行することを宣言しました。
しかし、「新安全基準」の骨子案を見れば、これをもって「安全な原発」を担保するなどとは到底いえるものではありません。
第一に、福島原発事故はいまなお収束しておらず、原因の究明には程遠い状況だということです。地震による損傷の検証のための国会事故調査委員会による現地調査は、東電による虚偽の説明で妨害・隠蔽(いんぺい)されたままではありませんか。規制委員会の専門家会合で東電自身が「炉心溶融した後、その後に、原子炉格納容器にどのような影響を与えたのかなどは確定しておりません」と証言しているように、事故の経過すらいまだに分かっていないではありませんか。総理、事故の原因も分からず、事故の経過すら分からないもとでつくられた「安全基準」で、どうして安全を担保できるといえるのですか。
第二に、「新安全基準」骨子案は、地震対策について、原発の真下を活断層が走っていても、「露頭」―断層が地表に現れていなければ設置を認めるなど、とんでもない骨抜きの内容となっています。だいたい大震災を経て、日本の地震と津波の学問的知見の根底からの見直しが必要とされていますが、それは緒についたばかりであります。このような状況でつくられた「安全基準」で、どうして安全を担保できるといえるのですか。
第三に、「新安全基準」骨子案では、原子炉格納容器が壊れ、福島原発事故のような放射性物質が大量に放出される事故――過酷事故がおこりうることを認めています。一方で、過酷事故を想定しながら、他方で、「世界最高の安全」を強調する。総理、これは根本的な矛盾だと考えませんか。
1月の本会議での私の質問に対して、総理は、「安全神話に陥ってしまった点、政府として深く反省しなければなりません」と答弁しました。この場で「おわび」も口にしました。しかし、いま総理がおこなおうとしているのは、「安全神話」の再生産以外の何ものでもないではありませんか。「新安全基準」をテコとした原発再稼働は断じて認めるわけにはいきません。答弁を求めます。
沖縄米軍基地――「負担軽減」というが、負担増のオンパレードではないか
総理が、日米首脳会談で、普天間基地の辺野古(へのこ)「移設」を早期にすすめると誓約したことに、沖縄で激しい怒りの声が噴き上がっています。「県内移設反対」は、揺るがぬ沖縄県民の総意であります。日本の一つの県の総意を丸ごと蹂躙(じゅうりん)する国が、民主主義の国といえるのか。総理は、沖縄からのこの怒りの声に、どう答えますか。
総理は、施政方針演説で、「沖縄の負担軽減に全力で取り組みます」とのべました。しかし、いま沖縄で起こっている事実はどうでしょうか。
――辺野古に建設が予定されている海兵隊の新基地は、V字形の2本の滑走路を持ち、約200メートルの艦船が接岸できる護岸を持つなど、飛行場と港湾が一体化した最新鋭基地であり、新基地建設自体が、沖縄にとって耐えがたい負担の強化であります。
――また、MV22オスプレイ配備が強行され、普天間基地での離発着だけでなく、沖縄全土につくられた69ものヘリパッド――着陸帯を使用し、日米合意すら無視した人口密集地・住宅地上空での飛行が常態化しています。
――さらに、最新鋭のステルス戦闘機F22ラプターが、嘉手納基地に繰り返し「暫定配備」され、事実上の常駐化がすすんでいます。
――そして、昨年来の米側の説明によると、沖縄に駐留する海兵隊は、減るどころか、現在の約1万3千人から当面、2万人へと大幅に増加するとされています。
このようにいま沖縄で起こっている事態は、「負担軽減」ではありません。「負担軽減」どころか、負担増のオンパレードではありませんか。「負担軽減」などという偽りで、新基地建設を押しつけることは、絶対に許されるものではありません。
「普天間基地の閉鎖・撤去」「県内移設反対」「基地のない平和で豊かな沖縄」――県民のこの総意に正面から答えることを強く求めて質問を終わります。
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