国民の利益に背く対米誓約は許されない
日米首脳会談で志位委員長が談話
日本共産党の志位和夫委員長が発表した、日米首脳会談についての談話は次の通りです。
一、安倍首相とオバマ大統領は、23日(日本時間)、ワシントンで日米首脳会談をおこなった。
安倍首相は、日本の経済主権を投げ捨て、食と農をはじめ日本の産業と国民生活のあらゆる分野に深刻な打撃となるTPP(環太平洋連携協定)交渉参加に大きく踏み出す意向を示した。TPP参加は、国論を二分している大問題であるにもかかわらず、国会をはじめ国内での国民的議論の場で態度を明らかにすることなく、日米首脳会談という場で交渉参加に踏み出したことは許しがたい。
さらに、日米首脳会談は、「日米同盟の強化」を強調し、沖縄の新基地建設、軍事力強化、集団的自衛権行使に向けた憲法解釈の変更の推進、原発の再稼働と推進を約束するなど、日本国民の民意に背く異常な対米追随ぶりを際立たせるものとなった。
一、TPPについて、安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」としている。
しかし、発表されたTPPに関する「日米の共同声明」では、「全ての物品が交渉の対象とされる」とし、すでにTPP交渉参加国で合意されている「『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する」としている。この「アウトライン」は、「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する」――すなわち関税と非関税障壁の撤廃が原則であることを明記したものである。“アウトラインの達成を確認する”としながら、「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」などというのは、国民を欺くものにほかならない。
「日米の共同声明」では、「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」と書かれている。しかし、これは、交渉の場で例外を主張することは「認める」という程度のものにすぎず、交渉の結果がどうなるかについて、何らの保証をあたえるものではない。
こんなごまかしで、国民への公約を投げ捨て、農業や医療、食の安全をはじめ、広範な分野で地域経済と国民生活に深刻な打撃となるTPPを推進することは絶対に許されるものではない。
一、両首脳は、日米合意に基づいて名護市辺野古への普天間基地「移設」を早期に進めることで合意した。沖縄県下41市町村のすべての首長と議会の議長が署名した建白書、全会一致の沖縄県議会決議にみられるように「辺野古移設」反対、普天間基地閉鎖・撤去は沖縄の総意であり、この総意を踏みにじって新基地を押しつけることは、断じて許されるものではない。
一、首脳会談は、「日米同盟はアジア太平洋地域の安全保障にとって中心的な礎」とうたい、安倍首相は軍事力強化への取り組み、集団的自衛権行使容認に向けた議論を進めていることを強調した。集団的自衛権行使は、日米が海外で共同した軍事活動をおこない、「肩を並べて武力行使する」ためのものにほかならない。日米軍事同盟のきわめて危険な侵略的変質をはかり、海外での武力行使を禁じた日本国憲法にまっこうから逆らうものである。
一、安倍首相は、オバマ大統領へ「2030年代に原発稼働ゼロを目指す民主党政権の方針をゼロベースで見直す」と約束した。民主党政権の「原発ゼロ」を批判して、閣議決定を阻んだアメリカに、原発再稼働・推進の「確約」を与えるものである。「安全神話」をふりまいて深刻な福島原発事故を引き起こした自らの責任を顧みず、原発ゼロを求める多数の国民世論をなおざりにするものである。
一、このような数々の国民の利益に背く対米誓約をおこなったことにたいして、日本国民の各分野からの批判はいよいよ強まらざるをえないだろう。日本共産党は、TPP参加反対、原発即時ゼロ、基地強化反対、普天間基地の無条件撤去、憲法改悪反対など、一致する要求にもとづく共同のたたかいを前進させながら、「アメリカいいなり政治」の根源にある日米安保条約廃棄を求める国民的世論をひろげるために奮闘する。