13歳からの研究倫理
1 研究のルールを守ろう
研究のルールも守らなければなりません。あなたには悪気がなかったとしてもルール違反をすれば不正行為としてあつかわれてしまうのです。スポーツとおなじように研究にもルールがあります。このルールは研究倫理とよばれています。研究倫理は、自由研究や課題探究をしているすべての人が守らなければならないルールです。では、あなたは研究倫理、もしくは研究のルールについて聞いたことはあるでしょうか。ほとんどの人はないと思います。これは大きな問題です。たとえば、サッカーの試合で面倒だから手でボールを運んだり、野球の試合で1塁から2塁を飛ばして3塁に走ってしまうようなものです。しかも、多くの人がルールを知らないので「どうしてダメなの? このほうが楽に点が入るよ」と思ってしまう可能性があるのです。
あなたが研究倫理を知らないまま探究をしているとすると、あなたは知らないうちにルール違反をしてしまうかもしれません。あなたに悪気がなく、一生懸命やったことでも、ルール違反になれば「不正行為」としてあつかわれてしまいます。
2 科学教育先進国、日本
日本以外の国では、とくに小中学校での探究活動はあまり行われていません。そのため,他の国では小中高校生に向けた研究倫理教育はないのです。小中学校では夏休みに自由研究を行う学校がほとんどで、あなたも今まさに自由研究の真っ最中かもしれませんね。しかし、国際調査(1)の結果より、小学校低学年から自由研究をするのは日本がトップであり,アメリカや中国では小中学校での自由研究は活発ではないことがわかります(図1)。日本は、自由研究を通じて小さい頃から組織的に理系人材を育成している科学教育先進国なのですね。
図1 自由研究の実施時期(出典 青少年教育振興機構(1))
そのため,日本以外の国では小中高校生に向けた研究倫理教育の必要性が少なく、これまで世界的に小中高校生を対象にした研究倫理教育の書籍は存在していませんでした。一方、日本はどうでしょうか。スーパーサイエンスハイスクール事業やグローバルサイエンスキャンパス事業,そしてジュニアドクター育成塾事業などの国が主導する小中高校生向けのプログラムをはじめとして,数多くの自由研究コンテストが開催されています。
日本は,小学生から組織的に探究活動を行う、世界でも珍しい科学教育先進国なのです。そう。つまり、日本に向けた独自の研究倫理教育が必要なのです。しかし残念なことに、いままでの探究活動指南書は、研究計画の立て方や発表の仕方に焦点があたっていて、研究のルールを解説した書籍は存在していませんでした。そこで「ないなら作ればいい」と、この書籍を書くことになったのです。
(1)独立行政法人国立青少年教育振興機構ホームページ,「 高校生の科学等に関する意識調査報告書 日本・米国・中国・韓国の比較(平成26 年8 月)」(http://www.niye.go.jp/kenkyu_
3 対話式で読みやすい内容
3人のキャラクターの対話で話が進みますので、読みやすくなっています。
対話式が読みやすいのはガリレオの時代から変わりませんね。「ぼく」と「おねえちゃん」が、親戚の科学者「利香さん」と対話しながら研究倫理について考えます。また、TAKAさんによる美麗なイラストで内容をイメージしやすくなっています。
4 ケーススタディで考えよう
ケーススタディ(3章)とシミュレーション(4章)で、話し合ってみましょう。
「わかった気になる」ことと「理解している」ことの間には大きな差があります。私が実際に目にしてきた事例からケーススタディとシミュレーションを作りました。あなたは、おなじ状況でどうするでしょうか。このふたつの章は、ぜひ周りの人と話し合って欲しいところです。
5 まとめ
研究のルール、研究倫理を理解して、楽しく、正しく探究活動を行いましょう。
ルールに違反すると、あなたに悪意のあるなしとは関係なく不正行為としてあつかわれてしまいます。一生懸命やったのに「意図しない不正行為」になってしまう悲劇を防ぐためにも、研究倫理を身につけましょう!
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