山田玲司のブロマガ

【第424号】にんげんってなーに

2023/02/27 07:00 投稿

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山田玲司のヤングサンデー 第424号 2023/2/27

にんげんってなーに

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月二回になったメルマガ。今月後半のメルマガは久世です。


今日は人間って何だろうというお話しと、それを作品にするために僕のやっている方法のお話をします。


興味ない方はごめんなさい。


前も言ったと思いますが、僕の舞台や詩、映像やインスタレーション作品のほとんどすべてに共通しているテーマが「人間って何だろう」という言葉に集約されています。


そのテーマが通奏低音として作品にあって、その上に、他の作品ごとのテーマが乗っかっているという感じです。


にんげんってなんでしょう。残酷で、面白くて、愛おしくて、馬鹿で、醜くて、かわいくて、

それは僕が人間だから人間のことをそう思うんでしょうか。


人間以外と言葉で意思疎通が取れないからわからないですね。

人間が人間の特徴をいくら言っても仕方ない気もします。


人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ


というのは有名なチャップリンの言葉ですが。確かにそうだな。と思います。


人間って何だろうって、そんなもん、世の中の全てのコンテンツは「人間」がつくっているのだから、どの作品でも、人間ってなーにってことは前提条件として表せているとも思います。でも、僕は、ずっと、一番真ん中に人間ってなーになんです。


先日ヤンサンで特集をしたブレイキング・バッドを観ているときも人間っていったい何だろう。何が正しくて何が間違っているのだろう。と思いながら観ていました。


正しいも間違っているもなく、行動の価値は自分では決められない。やってる人間に正しいも間違っているもやっているときは分からない。そんな気もします。



番組で以前特集したルドガー・ブレグマンのヒューマンカインドをよく思い出します。

性善説の話しです。


誰だっていつだって「周りをよくしよう」「こっちの方がいいんだ」と思って生きている気がします。

その「周りをよくしよう」や「こっちの方がいいんだ」の「周り」や「こっち」の線引きは人それぞれあまりにも違うのが困りものです。



それを性善説といっていいのか、色んな作品を見ているうちにわからなくなってくることも多いです。


人間っていったいなんだろう。ってことを、どうしたら、作品で面白く伝えられるだろうかと考えたときに、僕は、このテーマをメインで扱う時には、面白い物語や筋書きは必要ないと思うようになりました。


それは目の前で時間が流れ、家の中で決して見ることのできない「舞台」というモノを主戦場にしていた時間が長いからかもしれません。

舞台は、途中で帰る人もいますが、基本的には、来たら、いくらつまらなくても、それが終わるまで、見るしかない。飛ばせない、消せない。というメディアです。メディアという言葉が出来る前からあるモノです。

最初から明らかに面白い脚本があると、脚本の展開と物語の展開に思考が向かってしまって、人間という存在についてをメインに思考する材料にならない。と思うんです。


なので、人間とは一体何だろうという問いを一つの思考材料として提示する際に、物語は必要ないと思うことがあります。


人間には人間以外には意味のないことを必死でやってしまうという特徴があると思います。なので、意味のないことを必死でやっている姿の中に、人間って何かということの鍵があると思っていて、だから、そうか、それを提示するには意味を解体すればいいんだ。


言葉の意味を無くして、行動の意味もなくして、気持ちと言葉も乖離させて、何を言って何をやっているのかわからない中で、ただ、人間がそこに居る姿というのをその場所に置けば、人間が何かというのを一つ、問題提起できるかもしれないと思ったんです。


それを上演出来れば、人間が何かという「意味」が本質的に浮かび上がるのではないかという。


この10秒20秒で面白くなければ再生されなくなる動画の世界で気の長い付き合いを強いることになりますが、そういう時間の流れ方があってもいい。いまだにそう思います。



とはいえ「それってだからどういう内容の作品?」とも客観的に見て思うので、


今回は、そういう意図で描いた「会話の果て」という作品を公開してみたいと思います。

13年くらい前の作品ということもあり、古いですが、どう面白くできるのかを思いつけば、面白くなる本だと思っています。


意味がないのが特徴なので、色んなものを込めやすい。


これをどう面白くするか、という行為自体も人間とは何かの手がかりになる気がしています。


考える人、演じる人、関わる人、物語が面白くない分、どう面白くするか、必死でやらないと面白くならないところも僕にとっては面白いです。



これは親しい俳優二人に演じてもらったので、台本に書かなくていい言葉や分かりづらいところも書いたりしてますが今回はそのまま載せます。




「会話の果て」  


噛み合わない会話の果てには何が広がるか。

「これは回想?これは分岐点?日常を誇張するというギャグ」


この世界のどこかの場所。無表情で会話をする二人。

2人は視線を交わさず正面を見据えながら話している。

何を言っても面白くなってしまう深夜のテンションの悪ふざけのような。

言いながら笑ってしまっていたりするような。空気自体は客観的に見ると不穏さを感じるが、演じている者同士はどこか楽しそうな空気が付きまとっている。

どこまでが本気なのか、ほとんどよくわからない。

場所はどこかのバーでも、公園でも、好きに設定していいものとする。

音、照明、舞台装置、映像がそれぞれの意思をもって呼吸しているような空間。

だれがどのように何を変化させてもいい。

誰かの意思だけで統一させていないような空気。

演技、音、照明、舞台装置、映像のどれかがどれかに隷属するような関係ではなく、それぞれが意志を持って独立して存在してたまに偶然神様のいたずらで交差するような雰囲気。何がどこで主導で動いてもいい。



登場人物

A どのようにつくりこんでもいい。

B どのようにつくりこんでもいい

______________________________



A「刺青見せてよ。」

B「僕、刺青、してないですよ。」

A「刺青見せてよ。」

B「してないですよ。」

A「それはお前が決めることじゃないよ。お前が刺青してるかどうかは俺が見て決める。」

B「なるほど。」

A「だから刺青見せてよ。」

B「してないです。」

A「優しい人だとか頭が良いとか、そういうのは周りが思うことで自分が勝手に決めることじゃないだろ。お前が刺青してるかどうかは、俺が・・・俺が・・・(喜怒哀楽どの感情でもいいがこらえられない様子で)」

B「刺青は自己申告でいい。」

A「屁理屈はいいから見せろよ。」

B「どこを見せれば刺青をみせたことになるんです?」

A「お前が思うところでいいよ。」


   腕(じゃなくてもどこでもいい)を差し出すB。それを見てA満足そう。A、出された手をとりぶつぶつと呪文のように何度も「刺青」や「刺青か!」「いれずみ?」などと呟いている。ふと、空間と世界が終わったように。満面の笑みや極端な感情で。


A「東京の端っこかー。東京は端っこが一番旨いモンな。(って)言うよな?東京の端っこか。うまいんだろうな。」

B「そんな話してました?」

A「今度ホルモン食べにいこう。」

B「いいですよ。」


二人の間に沈黙が流れる。


A「ホルモンって…寿司だっけ?」

B「違いますよ。」


   このあとBは、Aの台詞に反応して、適当にナルシストなポーズを何度もとる。

踊ったりしてもいい


A「…。大トロとかあるやつだよね?」

B「それは寿司です。」

A「へぇ。じゃぁホルモンって寿司なの?」

B「違いますね。」

A「色々種類あるやつでしょ?」

B「まぁ。はい。」

A「小肌とか平目とか」

B「それは寿司ですね。」

A「えっ!?寿司ってホルモンなの?」

B「違います。」

A「ホルモンってコリコリしているやつか。」

B「そうです。」

A「ゲソとか、赤貝とか。」

B「それは寿司ですね。」

A「そうなんだ。やっぱり寿司ってホルモンか。」

B「違います。」

A「分かった。ホルモンって白くててかてかしてるやつか。高級なやつは艶があって独特のテカリがあるとされる。」

B「それです。」

A「シャリ!!」・「しゃりぃ!!!」


  B、Aの「シャリ」に対してかっこよくてくだらないポーズをとる。

「シャリ」のセリフは何度言ってもいい。ただし、特徴を変えること。


B「…。」

A「シャリ!!米の部分がホルモンだね。」

B「なんでホルモンはホルモンって言葉しかわからないのに寿司のほうは結構詳しいんですか?」

A「油っこいやつだ。口の中で油のうまさが広がるやつ。」

B「そうです!それですよ。」

A「ホルモンって大トロか。」

B「違いますね。それは寿司です。」


二人、視線を絡ませる。間に沈黙が流れる。

そしてまた前を向く二人。しばしの間。


A「今日は凄い風だ」

B「帰るのが億劫」

A「・・・。お前がもし風だったらどうする? 」

B「…。」

A「強く吹けば吹くだけ嫌がられて。自分の存在意義を否定されて。お前が風だったらどう    

する?」

B「俺が風ならもっと吹いてやります。皆もっと困ればいいんだ。それみて、勝手に困って 

んじゃねぇとも思います。」

A「そんな全力で吹いているお前が、もう風辞めたいって思うのはどんなときよ。」

B「…。」

A「絶好調に吹いているお前が、こんなことされるくらいなら初めから吹かなければ良か

ったと思うときはいつよ。」

B「風力発電とか。自分のエネルギーを勝手に別のものに利用されて、しかも感謝された

ときです。」

A「よし。」


二人、視線を絡ませる。間に一瞬の沈黙が流れる。B、銃を取り出して、Aに向ける。

B、Aに対して引き金を引く



B「ぐん!」(聞いたことない声)


A「フライパン!!」(人類が誰も見たことないおどけたポーズ・変な音の気の抜けた声)


しばらく静止。その後前を向くB。その後、前を向くA。ゆっくりと優雅に。

何かをやり遂げたよう。


A「なぁ。このさあ。いま流れている、何かの法則がありそうな音の連なりってもしかして・・・。」

B「あっ。俺も気になってました。」

A「だよな」

B「はい。」

A「せーの」

A・B「音楽」

A「やっぱり?」

B「恐らくですがね。」

A「で、この『音』に合わせて自分の想いを言葉にして、音のリズムに言葉が上手く寄り添っていく手法って」

B「(間髪居れずに)『歌』ですね!」

A「最高!!」


二人視線を交わす。間に一瞬の沈黙が流れる。そしてまた前を向く



B「ワインでも飲みますか?」

A「いいね。」


   第一部・完


   ここで大きな映像や音の変化があってよい。続けてもいい。


第二部


B「どうします?ワイン。イタリアの赤で良いですか?」

A「ぺろりんちょ。ちょりんごん。さろさろさろ。(どうとでも取れる不思議な時間・ポーズ・空気)」


   男B、店員に注文。ワインが運ばれてくる。


A・B「ナズ・ラビ・エ(乾杯という意味のスロバキア語)」


   ワインに口をつける二人

   A、動物のように気持ち悪い感じでワインを飲む

   B、ワインを知ってますよという風にわざとらしく気取って飲む


A「あれ?」

B「どうしました?」

A「ちょっ待って。当てるから。」

B「当てる?」

A「これは…。」

B「お気に召さない?」

A「ワインじゃない?(確認するニュアンス。そうだよねのような)」

B「そうですよ。」

A「やっぱり。当たった。」

B「ワイン、頼む って言いました。」

A「ちょっとしずかちゃん、ちょっと静ちゃん(静にしてってニュアンスで)。」


   Aワインをまた飲んで


A「うん。この味…赤っしょ?」

B「赤ワイン、頼む って言いました」

A「当たり?俺ソムリエになれるな。」

B「俺、赤ワイン、頼むっていいました」


   Aワインをまた飲んで。(Bもこの時常に飲んでいる。交互に二人の特徴的にグラスを置く仕草を印象的に見せたい)


A「分かった!!産地はイタリア。しょ?(しょ?しょ?)」


   B、「俺言ったよね?」という雰囲気を出すが、

スイッチを入れ替えて、悪乗りする。表情は変えない。


B「そんなことないでしょう。イタリアのワイン頼んだんですよ。イタリアなわけないじゃないですか?」


   Bワインを飲む


B「あれ?(凄く不思議そうな顔で始めてその事実を知ったかのように)イタリアだ。」

A「おいおい。イタリアワイン頼んだんだろ。それで、イタリアワインが来るなんて、そんなこと起こる訳が・・・(ワインを飲む)イタリアだ!」

B「いや、ちょっと待ってください。このワイン、イタリアの可能性ばかりか、イ・タ・リ・アの可能性までありますよ。(ワインを飲む)あれ?おかしいな。やっぱりイタリアだ。」

A「・・・。待て!飲むのやめろ!!」


飲むのを辞めるB。緊迫した空気。

(間の抜けた空気でもいい。空気をガラッと変える)


A「だってヘンだぜ。このイタリアワイン。飲んだだけなのに・・・へっへっへっ!!減ってる!!」

B「わっ!(ひぃっみたいな声)!ほんとだ!飲んだだけなのに!量が減ってる。」

A「そうなんだ。おかしいんだよ。飲んだだけなんだぜ!なのに、へっへっへっ、減ってる・・・。」

B「・・・飲んだ、から?・・・。飲・ん・だ・か・ら?!そんな。」

A「イタリアワイン穏やかじゃないな。(長谷川平蔵風・あごに手を当ててゆっくり動かす)」

B「いっいっいっ(しゃっくりみたいに)イタリアワイン、飲んだだけで、へっへっへっ(くしゃみみたいに)減った!」

A「イタリアワイン飲んだら減るか。ただ事じゃない。急ごう。(名探偵みたいに)」


   二人立ち上がる


B「はい。実はブルガリアワインです、これ。頼む直前に気が変わりました。」

A「だったら飲んだら減るな。」


   Bうなずく。その瞬間、A店員を呼ぶ。


A「これ、二つとももう下げてください。」


二人視線を交わす。

間に一瞬の沈黙が流れる。

二人踊る。

「ぴっぴっ。ぴゃっぴゃっ」のリズム・掛け声と共に。そしてまた前を向く



A「昨日さ。」

B「はい。」

A「昨日って言っても一昨日のことなんだけどさ。」

B「はい。」

A「昨日さ。あっ。これ、一昨日のことなんだけどね。」

B「はい。」

A「で、昨日ね。」

B「…。」

A「あっ、ごめん。一昨日のことね。(少し笑いながら)ちょっと分かりにくかったね。」

B「早く話してください」

A「昨日ね。あっこれから『昨日』って云ったら全部『一昨日』のことだと思ってくれて

構わないから。」

B「もう、ややこしいから昨日って言ってください。」

A「やだよ、普通。つまんない。」

B「そこは普通でいいですよ。」

A「駄目だよ。普段から気をつけなくちゃ。とにかく、俺、普通、ヤだから。」

B「はい。」

A「昨日ね。もちろんこれ、一昨日の話なんだけどね。」

B「毎回説明する位なら初めから『昨日』でお願いします。」

A「言わないと分かりにくいかと思って。」

B「分かりにくいから昨日って言って下さいって言ってるんです。さっきから何にも話が進んでない。」


話している途中に何かを思いついた様子


B「昨日(機能)障害ですか?」


したり顔をするB


A「あっ。えーと。違うわ。機能障害じゃない。うーん。なんていうか。伝わるかな。

微妙で繊細なニュアンスの言葉なんだけど。…。ふざけてるんだ。わかる?」

B「僕も今ふざけたんですよ。」

A「そっか。いい?続き話して。話しの腰を折るから何も進まない。」

B「貴方が進めないんでしょ!もう早く話してください。僕も暇じゃないんですよ。」

A「(人を殺す気迫で)俺だって暇じゃないよ!!」


   …。沈黙


A「で、昨日ね。」

B「一昨日でしょ?」

A「いちいち直さなくていいよ。これだけ言って伝わって無いとお前が馬鹿だから。」

B「…。あぁ?(素っ頓狂な声)」


苛立ちが募り過ぎて自分でも意図していない妙な声が音として出てしまう。


A「昨日ね。おでんを作ってたんだ。暇だったから。でもね。全然、作り方がわからな

いわけ。知ってる?」

B「そんなの、出汁取って大根とか卵とかチクワとか入れてコトコト煮込んだらなんとな

くおいしくなるでしょ。」

A「ここで俺が云ったおでんって、一般的にはショートケーキって言われてるものなんだ

けど・・・。それで作れるの?」

B「作れないですね。最初に説明が欲しかった。」

A「で、おでんなんだけど。『出汁汁』で、生クリームとかイチゴなんかのおでん種を『煮

立てて』完成でしょ?」

B「『スポンジケーキ』に生クリームとかイチゴを『飾り立てて』完成ですね。」

A「おでん作るとき、いつも出汁汁は出来合いのものを買ってくるんだけど。今回は出汁

汁から作りたくて。ベーキングパウダーにグラニュー糖と卵を混ぜて焼いたモノが

おでんの出し汁だってことはなんとなくイメージあるんだけど、分量とか正確には

わからなくてさ。知らない?」

B「そんな出し汁はないです。ネットで探してくださいよ。『スポンジケーキの作り方』な

んて色んなサイトで出てるでしょ。」

A「サイトって、あの・・・。」

B「そうです。ネットで、自分で探してください。」

A「今言おうとしたのは。サイトって、あのぉ一体なんですかって意味。」

B「もういい加減にしてくださいよ、斎藤さん」

A「馬鹿野郎。俺は木村だよ、中村」

B「分かってますよ、山下さん、僕は武田です」

A「えっ!!お前いつから長谷川になったんだ。」

B「もう帰りますよ和田さん。では、また来週。神田で。」

A「了解。明日渋谷ね。時間は10時でどう? 」

B「わかりました。じゃぁ池袋に19時で!」

A「六本木ね。改札でたとこな。」

B「喫茶店ですね。踏み切りのとこの。」

A「じゃあとで。」

B「はい。来月。」


                      おわり





今回はこの辺で。読んでくれた方、ありがとうございました。


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