3D小説「bell」本編

■山本美優/12月25日/17時

2014/12/25 17:00 投稿

コメント:1

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山本視点
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 そろそろ久瀬くんがくる時間だ。
「いきましょっか」
 とベートーヴェンが言って、扉を開ける。
 私もおそるおそるホールに出た。
 ちょうど同じタイミングで、向かい――あの、表に数字だけが書かれたパネルがあった部屋の扉が開いた。
 そちらから姿を現したのは、ファーブルとニールだ。
「もう見張りはいいんですか?」
 とベートーヴェンが言う。
「センセイの部屋に入るには、どうせホールを通らなければけいません。どちらにいようと同じ事です」
 とファーブルが答える。
 頭をかきながら、ニールがぼやいた。
「ならオレまで巻き込むなよ」
「誰も貴方にまでドアを見張れとはいっていないはずですが?」
「うるせぇ。オレの勝手だろうが」
 さて、と呟いて、ファーブルがこちらに歩み寄ってくる。
「そろそろ白状する気になりましたか?」
 彼は鋭い目つきでこちらの顔を睨みつけている。
 私は生れてはじめて殺意というものを感じたような気がした。どうしてこんなことになってしまったのだろう。本当に、わけがわからなかった。
「ねぇ、こんなリンチみたいなことしてても仕方ないでしょ? やっぱり警察を呼びましょうよ」
 そう言ったのはベートーヴェンだ。彼女の感覚が、いちばん一般的――というか、私に近いように思う。
 だがニールが首を振る。
「センセイが死んだってのは、考えづらい」
「どうして。あれだけの出血よ? それに昨夜の時点では間違いなく脈が止まってたんでしょ」
「だがセンセイの遺体は消えちまった。オレが馬鹿な飼い犬みてぇにこのドアを見張ってたのに、だ」
「つまり密室から死体が消えたっていうんでしょ? でもそれで、どうして死体が生き返ったことになるのよ?」
「そんなことができるのはセイセイだけだからだよ」
「なによそれ? 密室トリックは被害者じゃなくて犯人の領分でしょ」
「お前は本当にセンセイのことがなんにもわかってないんだな。オレは、センセイが死んだふりをしたのさえ、あの人の悪ふざけだって可能性を疑ってるんだぜ」
 彼は鋭い目つきでこちらをみる。
「なあ、山本。あんたはセンセイに頼まれて、あの人を刺した振りをした、なんてことはないのか?」
 頷いてしまえばいいのではないか、と一瞬だけ思った。
 実は殺人事件なんてなくて、ただ「センセイ」と呼ばれる人がいたずらですべて演じていただけで、私はその協力者で。
 ぜんぶ趣味の悪いフィクションなら、それでよかった。
 ――でも、違う。
 昨日、確かにひとりが死んだのなら、それを勝手に嘘にしてしまっていいはずがない。
 私は首を振る。
「何度も言ってるでしょ。私はあの部屋で気を失っていただけなの」
 嘘は嫌いだ。それで、誰かが傷つくかもしれないから。
 私は、私の知っている真実を信じる。
「さっさと警察を呼んで、それではっきりさせましょうよ」
 ファーブルが首を振る。
「センセイのご意向がわからない以上、迂闊なことはできません」
「ただ、普通に、殺されただけかもしれないじゃない」
 思わず答えながら、何を言っているんだ私は、と思った。
 人が死んだことが、誰かに殺されたことが、「ただ普通」なんて状況なわけがなかった。いついかなる時でも、どんな理由があろうとも。
「ただ普通に死ぬなんてことはあり得ないんだよ、あの人に限ればな」
 とニールが言った。
 ファーブルは、どこか悲しげな、もっといえば不安げな笑みを浮かべる。
「今回の件に関しては、珍しく私と貴方の意見が共通しているようですね」
 はっ、とニールは笑う。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ。オレはさっさと帰りたいんだ。つまらない脇道に時間をとられていたくないんだよ。結局、このガキがセンセイの指示を受けていなかったんなら、未遂だとしてもこいつが犯人なんだろ。それで決まりだ」
「ですが、センセイの行方は未だわかりません」
「それこそセンセイの勝手だろ。会いたきゃ向こうから出てくるさ」
 ほら、解散、解散――と、ニールは手を振る。
「いいえ。今日はクリスマスだ。どんな奇跡が起こっても不思議ではありません」
 妙に芝居がかった口調で、ファーブルは首を振る。
「もうしばらく、あの方の帰還を待とうではありませんか」
 いや警察――とベートーヴェンがつぶやく。
 でもニールもファーブルも、そんなこと聞いてはいないようだった。
「どうでしょう、ニール。私は少々、観察眼に自信があります。余興に昨夜、なにがあったのか解き明かそうではありませんか」
「興味ねぇよ。勝手にやってな」
「そういわずに。考えてみれば、いかにもセンセイらしい趣向だとは思いませんか? 密室に消えた死体。その死体自身がセンセイというのも、あの人の遊び心のように感じます」
「お前がセンセイのなにを知ってるってんだよ」
「おやおや。貴方が古参だということを鼻にかけるのも珍しい」
「うるせぇ。オレの前で笑うんじゃねぇ。お前の笑顔はぶん殴りたくなる」
 どうやら話が奇妙な方向に進んでいるようだった。
「まあ、犯人はこの少女で決まりでしょうがね」
「ちっ。その点だけは、同意してやるよ」
 しかも私には都合の悪いところだけで仲がいい。
「そんなことよりも――」
 はやく警察に、と、また言おうとしたときだった。
「いいですね」
 若い青年の声が聞こえた。

       ※

 ドアが開いていた。
 なぜだか、ひとめでわかった。
 そこに立っているのは、彼だ。
 あのころとまったく違う。でも、なにも変わっていない。
 安心して、気が抜けて、涙が滲んだ。
 ――久瀬くん。
 本当に来てくれたんだ。
「やっときたのね」
 とベートーヴェンが言った。
「すみません、宮野さ――」
「黙りなさい私はベートーヴェンよ」
「なんですかそのまんまな名前」
「うるさいわねいいでしょ。こっちも色々大変なのよ」
「お手数をおかけしましたよ。貴女がここにいて助かりました」
 彼は息を吐き出して、それから、こちらに向かって歩いてきた。
「本当に山本がいた」
 どきりとする。
 もともと、彼を捜してここに来たはずなのに、急に再会するなんて考えてもいなかった。
「ええ、はい」
 と口ごもりながら頷いた。
「久しぶり。10年ぶりくらいかな?」
「うん。だいたいそう」
「なんかへんな感じだな。意外とわかるもんだよな」
「うん。わかる」
「元気にしてた?」
「そこそこ。普通に大学生だよ。久瀬くんは?」
「オレもそう――じゃないかな、たぶん。なんかころころ状況が変わるんだ」
 久瀬くんは困ったような、どちらかというと恰好悪い顔で笑う。
 彼がなにを言っているのかはよくわからないけれど、その笑顔がみえてよかった、と素直に思う。
「なんにせよ、今は容疑者なんだろ?」
「うん。よくわからないんだけど、なんかそんなことになってます」
「たぶんオレが巻き込んじまったんだろうな。悪い。でも、きっともう大丈夫だ」
 久瀬くんはポケットから、スマートフォンを取り出す。
「名探偵に事件の真相を解き明かしてもらおう」

読者の反応

ほうな@bellアカ @houna_bell
宮野さんwwwwwwwwwwwwww 


chronos @chronos9603
久瀬君推理丸投げやないかーいwwwwwwwwwww


みゆ@ソル見守り班 @yazima_miyuki
ほんと久瀬くんの登場かっこいい


のにか@富山sol @nyooo0207
電波きたー!!





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なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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山本視点

コメント

丸投げ久瀬君w

No.1 119ヶ月前
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