3D小説「bell」本編

■山本美優/12月24日/22時

2014/12/24 22:00 投稿

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山本視点
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 22時になる10分ほど前に、私は偉人たちの部屋をあとにして、最後の扉の前に移動した。
 それからの10分間は、奇妙に長く感じた。
 私はじっと、そのときがくるのを待って、そして。
 22時ちょうどに、扉の前で、言った。
「サンタはいない」
 口に出すと、想像よりも悲しい言葉だな、と感じた。
 サンタクロースがいないことなんて、ずいぶん前から知っていたはずなのに。
 私は心のどこかで、サンタクロースの存在を信じていたのかもしれない。
 かちり、と小さな音をたてて、扉が開く。

       ※

 まずみえたのは、サンタクロースの後姿だった。
 ――この人が、センセイ?
 久瀬くんの手がかりを持っている人。
 彼はサンタクロースの上着を着て、帽子をかぶり、部屋の奥のデスクに向かって、座っていた。
「座らないのか?」
 と、くぐもった声が聞こえた。
 部屋には赤と白のクロスがかかった丸いテーブルがある。その上には銀色のトレイにのった、ティーカップがふたつ。それと、白いカプセルがあった。
「失礼します」
 私はそう答えて、椅子に腰を下ろす。
「よくきたね。君を待っていた」
「どうして、私を?」
「前に会ってからずいぶん経つけれど、元気にしていただろうか」
「まあ、それなりに」
「私からのプレゼントを君はまだ持っているかな」
「プレゼントってあのスマートフォンですか?」
「そうだ」
 なんだか会話が、もどかしかった。
 私は久瀬くんのことを尋ねたいのだ、ストレートに。
 でも、センセイは呑気に言う。
「すまないが、紅茶に薬を入れてくれないか。カプセルを飲むのはどうも苦手だ」
「え、はい」
 私はテーブルの上にあったカプセルを手にとり、開く。
 中の粉末が、紅茶におちて、じわりと解けた。
「ああ、薬は棚の中にある」
 え?
「これじゃなかったんですか?」
 たいへんだ。間違った薬を入れてしまったのだろうか。
 私は慌てて、右手にある、白い棚を開く。
「白いカプセルの……」
 と、センセイがいった。
「やっぱりこれじゃないですか?」
 なんだか、すれ違いを感じる。
 私は紅茶を手に取り、センセイのデスクの隣にあったサイドテーブルに運ぶ。
「そう、ありがとう。紅茶をこちらに」
 少し遅れて、センセイはそう言った。
 センセイはずいぶん疲れているようだった。
 意識が、朦朧としているのだろうか?
「よければ、君も紅茶を
「……ありがとうございます」
 センセイに勧められて、紅茶に口をつける。
 冷めていた。味は、よくわからない。少し苦すぎるような気もする。
 私は意を決して、久瀬くんのことを尋ねようとして、そのとき。
「君はまだ久瀬くんを捜しているのだろうか?」
 勢いよく答える。
「もちろんです」
 そのために、ここに来たのだ。
「残念だが、彼はもうどこにもいない」
「……どういう意味ですか?」
「君からみれば、私がすべての元凶にみえるだろうね」
 どうして?
 このひとが、どうして悪いことになるんだ。
 長時間緊張していたせいだろうか、ふ、と平衡感覚がなくなった。
 眠気? これは――
 その直後。
 どこかから、なにか、小さな声が聞こえたような気がした。
読者の反応

パイロ亭@川越ソル @pyroteeeeeeeee
あと2時間!  pic.twitter.com/EJRf2iect9
196e2b5d31b50fbc6bc931a4c588dd29d1d056d9

あしか(蜜柑) @asika809
えっ?ん?倒れた!?


鯱海星 @syati_hitode
先生は目が見えて無いか、人形が置いてあって録音された声を再生してるかのどっちかだね





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