22時になる10分ほど前に、私は偉人たちの部屋をあとにして、最後の扉の前に移動した。
それからの10分間は、奇妙に長く感じた。
私はじっと、そのときがくるのを待って、そして。
22時ちょうどに、扉の前で、言った。
「サンタはいない」
口に出すと、想像よりも悲しい言葉だな、と感じた。
サンタクロースがいないことなんて、ずいぶん前から知っていたはずなのに。
私は心のどこかで、サンタクロースの存在を信じていたのかもしれない。
かちり、と小さな音をたてて、扉が開く。
※
まずみえたのは、サンタクロースの後姿だった。
――この人が、センセイ?
久瀬くんの手がかりを持っている人。
彼はサンタクロースの上着を着て、帽子をかぶり、部屋の奥のデスクに向かって、座っていた。
「座らないのか?」
と、くぐもった声が聞こえた。
部屋には赤と白のクロスがかかった丸いテーブルがある。その上には銀色のトレイにのった、ティーカップがふたつ。それと、白いカプセルがあった。
「失礼します」
私はそう答えて、椅子に腰を下ろす。
「よくきたね。君を待っていた」
「どうして、私を?」
「前に会ってからずいぶん経つけれど、元気にしていただろうか」
「まあ、それなりに」
「私からのプレゼントを君はまだ持っているかな」
「プレゼントってあのスマートフォンですか?」
「そうだ」
なんだか会話が、もどかしかった。
私は久瀬くんのことを尋ねたいのだ、ストレートに。
でも、センセイは呑気に言う。
「すまないが、紅茶に薬を入れてくれないか。カプセルを飲むのはどうも苦手だ」
「え、はい」
私はテーブルの上にあったカプセルを手にとり、開く。
中の粉末が、紅茶におちて、じわりと解けた。
「ああ、薬は棚の中にある」
え?
「これじゃなかったんですか?」
たいへんだ。間違った薬を入れてしまったのだろうか。
私は慌てて、右手にある、白い棚を開く。
「白いカプセルの……」
と、センセイがいった。
「やっぱりこれじゃないですか?」
なんだか、すれ違いを感じる。
私は紅茶を手に取り、センセイのデスクの隣にあったサイドテーブルに運ぶ。
「そう、ありがとう。紅茶をこちらに」
少し遅れて、センセイはそう言った。
センセイはずいぶん疲れているようだった。
意識が、朦朧としているのだろうか?
「よければ、君も紅茶を
「……ありがとうございます」
センセイに勧められて、紅茶に口をつける。
冷めていた。味は、よくわからない。少し苦すぎるような気もする。
私は意を決して、久瀬くんのことを尋ねようとして、そのとき。
「君はまだ久瀬くんを捜しているのだろうか?」
勢いよく答える。
「もちろんです」
そのために、ここに来たのだ。
「残念だが、彼はもうどこにもいない」
「……どういう意味ですか?」
「君からみれば、私がすべての元凶にみえるだろうね」
どうして?
このひとが、どうして悪いことになるんだ。
長時間緊張していたせいだろうか、ふ、と平衡感覚がなくなった。
眠気? これは――
その直後。
どこかから、なにか、小さな声が聞こえたような気がした。
パイロ亭@川越ソル @pyroteeeeeeeee
あと2時間! pic.twitter.com/EJRf2iect9
あしか(蜜柑) @asika809
えっ?ん?倒れた!?
鯱海星 @syati_hitode
先生は目が見えて無いか、人形が置いてあって録音された声を再生してるかのどっちかだね
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