意識が抜け落ちていく、いつもの奇妙な現象に身をまかせ、私は目を閉じる。
■佐倉みさき/8月11日/11時50分
鹿児島での私たちは、いままでとは雰囲気が違っていた。
まずひとつに、ニールがいつも以上に、機嫌が悪そうだったこと。
「こんな街の、どこに行けってんだ?」
と彼はなかばケンカ腰に言った。
ふたつ目はノイマンの返答だ。
「どこにも行かなくていいわよ」
「ああん?」
「うるさいわね、ニール」
「どういうことだよ?」
「知らないわよ。鹿児島には現地めぐりのリストが存在しないの」
「ならどうしてこんなところまで来たんだよ?」
「さあね。上から言われただけよ。貴方も同じでしょ」
なんだかぎすぎすした雰囲気のまま、私たちは鹿児島駅から路面電車でほんの数駅だけ移動した。
※
路面電車を降りてすぐ、私たちはこぢんまりとした建物の2階にあるカフェに入る。
床も壁も白い、さっぱりとした店内だ。窓には青や緑、オレンジの色がついたガラスがはまっていて、趣味の良いイラストみたいにお洒落だ。
私たちは窓辺のテーブルに座る。
相変わらず不機嫌そうな口調のままで、ニールはアイスコーヒーを注文した。私とノイマンはカフェラテを頼む。
「さっさと思い出せよ」
とニールが私を睨んだ。
なぜだかは知らないけれど、よほどこの辺りが嫌いなようだ。
「1枚目は、これよ」
と、ノイマンがイラストを指さす。
1番のイラストだ。
それは革靴のようだった。
「安定?」
と、私はイラストに描かれた文字を読み上げる。
「なにか、思い出す?」
尋ねられてもわからない。私は首を振った。
これまでとは違う。
まったくかけらも、なにも思い出せない。革靴についても、安定という言葉についても、それから鹿児島についても。久瀬くんとなにか話をした記憶はなかった。
なのに、あの感覚はやってきた。
まるで酔いのような、眠気のような。
意識が抜け落ちていく、いつもの奇妙な現象に身をまかせ、私は目を閉じる。
意識が抜け落ちていく、いつもの奇妙な現象に身をまかせ、私は目を閉じる。
煙@制作者派 @smoke_pop 2014-08-11 11:50:38
更新きたー これやっぱニールの話確定で良さそうだな
闇の隠居 @yamino_inkyo 2014-08-11 11:51:59
@sol_3d ニールがいらいらしてるのは、ここが故郷だから、か
ほうな@bellアカ @houna_bell 2014-08-11 11:53:43
鹿児島カフェここじゃないかな http://sandeco.exblog.jp/
Jill@Sol軍事班 @Noirfennec 2014-08-11 11:59:39
ある男の視点でもう辿れてるんだっけ?ニールの過去
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