今日も喫茶店でアイスコーヒーをすすっていた。
目の前には八千代がいる。彼に呼び出されたのだ。
もちろんまだ、八千代を信頼したわけじゃない。でも、彼の誘いには乗ろうという気になっていた。多少の危険を冒さなければ、なんの手がかりもつかめそうにない。
「じゃあ、これは知ってるかい?」
と八千代が言った。
「アイテム欄の一番下をふしぎなキャンディーにしておく。戦闘中、そのキャンディーを使うと、消費せずに効果を得られる。でもこれにはもうひとつ条件があって――」
古いRPGの裏技の話だ。
なぜこんな話になったのかよくわからない。はっきりしているのはなにも得るもののない無駄話だということだけだ。
オレは声が不機嫌になるのに構いもせず、言った。
「そろそろ本題に入ってくれよ」
レトロゲームの話題で盛り上がるために、わざわざ八千代に会ったわけじゃない。
「そうかい? 敵に追いかけられない裏技も知っているんだけどね」
「興味ないよ。みさきが、悪者に追いかけられなくなる裏技でもなけりゃな」
「ま、いいさ。なら本題だ」
八千代はホイップクリームが載ったアイスココアに口をつけて、言った。
「悪魔――佐倉みさきだったかな? 彼女を確保していたスイマの住所がわかった」
思わず、身を乗り出す。
「どこだ?」
「慌てるなよ。聖夜協会じゃ、オレは末端だぜ? オレのところまで情報が流れてきたんだ。もうそこにはいない」
じゃあ意味ないじゃないか、と叫びたかったが、思い留まる。
現場を調べれば、なにか手がかりがわかるかもしれない。ここで八千代と無駄話をしているよりはずっとましだ。
「どこだよ?」
「その前にひとつ、質問がある」
「なんだ?」
八千代はテーブルの上に、ちゃちな小冊子を置いた。見覚えがある。うちにもある小冊子だ。表紙には『聖夜教典』と書かれている。
「これを、みたことは?」
「あるよ」
「へぇ。どこで?」
「最初にみさきを誘拐した馬鹿の荷物に入っていた」
「内容に、思い当ることは?」
――ある。
もちろん、ある。
八千代はおだやかに笑っている。
「素直に答えろよ。オレは、嘘を見破るのが得意なんだ。本当のことを話せば、悪魔が捕らえられていた部屋まで連れて行ってやるさ。嘘をついたら、話はここまでだ」
ためらいはあった。
でもオレは、頷く。
「その冊子には、オレの過去が書かれている。気持ち悪く美化されているけどな」
八千代は笑う。嬉しげに、不気味に。
「うん。やっぱり君が英雄だ。間違いない」
スター(ロボ) @Sutaa 2014-08-03 16:02:51
だよね、久瀬くんの過去を知ってる人……が、あれ作ったってことだよね。
VIOLA@ソルコミュ!オーナー @viola_vfreaqs 2014-08-03 16:05:02
ノイマンさんの動向が食事会前以降一切不明なのも気になる…
みどばち @midobachi3 2014-08-03 16:06:59
まさか久瀬君が英雄だったなんてなー(棒
まぁや @maaaya1011 2014-08-03 16:12:05
八千代さんアメ好きだな。大阪のアパートにもアメ大量にあったし
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