眼鏡は、私の姿を見失ったようだ。
この追いかけっこが始まってから既にずいぶん時間が経過しているはずだが、まだ私が捕まっていないのだから、もし居場所がバレていたら、両腕を思い切り振れて息を大きく吸える眼鏡が、私に追いつけていないはずがない。
幸運だ。
でも、これだけでは足りない。
私はひたすらに山をくだる。私が向いている方向に街があるのだと信じる。そこに辿り着くまで私の体力が持続することと、眼鏡に追いつかれないことを願う。すべて叶えられるのはどれほどの確率だろう? これがただのギャンブルなら、私は私にベットしない。
朽ちた木と木の間を抜け、苔の生えた岩を踏まないように避け、斜面を下る。汗でテープがはがれ、息は吸いやすくなっていた。でも3回転んで、膝と肩から血が流れた。軽く足首をひねっている。今は痛みはないが、それはきっと恐怖で紛れているからだろう。
そろそろ、限界だ。
そう感じたとき、ふいに、視界が開けた。
――街?
違う。道路に出ただけだ。民家もない。
一瞬、私は迷う。再び山の中に入るか、道路を進むか。もう山道は嫌だった。でも道路は意外に見通しがいい。
私は覚悟を決めて、道路を渡り再び山の中に入ろうとした。
ちょうど道路の真ん中にさしかかった、その時だった。
目の前の木々のあいだから、ふいに男が、姿を現した。
あの、サングラスだ。
「アインシュタインは1日に10時間も寝たらしいぜ」
と、サングラスは頭をくしゃくしゃと掻きながら言った。
「いい子はよく寝るもんなんだよ。俺も寝るのは好きだ。夜更かしは悪いもんだって小さい頃に習ったしな。なのに、てめえはなんで俺を起こしてんだよ」
彼が饒舌で早口なのは、不機嫌だからだろう。
でも、私が返事ができなかったのは、彼の言葉に気圧されたからでも、息が上がってまともに呼吸できないからでもなかった。
――なぜ、サングラスがここに?
理解できない。思考が、止まった。
眼鏡が連絡を入れたのか? 私が逃げたから?
でも、どうやって?
私をトランクにつんだ車は、サングラスがいたアパートから、それなりの距離を走ったように思う。サングラスが駆けつけるのにも、同じくらいの時間がかかるはずだ。なのに今、このあたりには車どころか自転車すらない。人も通っていない。
なにが起こっているのか、理解できなかった。
身動きがとれないでいるあいだに、背後で草をかき分ける足音が鳴った。振り返る。眼鏡だ。追いつかれたのだ。
道路を下る方向へと私は、がむしゃらに駆け出す。それをみて、前方のサングラスも足を踏み出す。
途端、数歩分の距離を飛び越えて、目の前にサングラスが移動している。驚きのあまり、息が詰まる。わからない。なにも。本当に。
背後から、眼鏡が私の手をつかむ。背中には、車内から持ってきていたのだろう拳銃が押し当てられている。
「さっさと車につれてけよ」
と、サングラスが言ったところで、また音が聞こえた。
モーターの音。車だ。濃紺色のセダンがカーブを曲がり、こちらへと走って来る。
その車はサングラスの隣で停まり、窓が開いた。
「どうやら、間に合ったみたいね」
聞えてきたのは女性の声だ。おそらく、初めて聞く声。でもどこか懐かしいような気もした。
サングラスが屈みこむような姿勢で車内を覗き込み、言う。
「どうして、お前が来てんだよ」
「その子、こっちに渡してもらえるかしら」
「は?」
サングラスの声が半音、低くなった。あきらかに怒りが込められている。その迫力に私は震えそうになるが、女性はあくまで事務的に言う。
「メリーからの指示よ」
「メリーの? どうして」
「言えないわ」
「おいおい、こっちはそこの馬鹿に叩き起こされたんだぞ。野郎からの失敗の報告なんてもんは、考え得る限りで最悪の目覚めだよ。それでもオレは寛大な心で、名前がついてるんだかもわからねぇこんなへんぴな山の中までふらふら出てきてやったんだぜ? オレの善意を徒労で終わらせるつもりか?」
「誘拐が善意ってことはないでしょう」
「仲間の尻を拭うのは善意だよ。どんな時でもだ」
「その仲間が引き渡せと言っているのよ。まさか、メリーに逆らうつもり?」
と、そこで間があった。
数秒ののち、サングラスが舌打ちをした。かと思うと、私の方を振り返り、首根っこを掴む。私はそのまま強い力で、前方へと引かれる。バランスを崩しながら、たん、たん、と2歩ほど進んで、ボンネットに寄りかかり、顔を上げる。
フロントガラス越しに、黒髪の女性と目が合った。
私より年上なのは確実だろう。でも、子供みたいに沁み一つない肌のわりに成熟した雰囲気をもっていて、20代後半にも30代にも、あるいは40代にも見える、ミステリアスな人だった。
彼女は口元で微笑む。
「初めまして、悪魔さん」
なんと答えていいのか、わからない。
女性はサングラスを睨む。
「ほら、レディが乗車するのよ。早くドアを開けなさい」
私もつられて、サングラスに視線を向ける。彼は既に背中を向けていた。こちらをちらちらと窺う眼鏡から拳銃を回収し、それを腰のベルトで挟む。
「知るかよ。オレは男女平等主義だ」
そして足を一歩踏み出すと、彼の姿は幻のように、消えてなくなった。
■ネット組&現地組(新大阪)、合流
なゆひに @nayuhini 2014-07-27 12:31:11
インターホンきたー!
蓮霧(れんむ)は愛領@夏休み @renmu0309 2014-07-27 12:31:38
ソル到着確認しました!!!
ちょくし@[3D小説 bell]参加中 @DodoRoku 2014-07-27 12:32:51
間に合わぬ、けど行く
ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-07-27 12:32:18
ドアノブに鍵ついてる…。ドアに関係ある?
さいとう@1日目東コ-51b @jinbe_s 2014-07-27 12:33:55
@nandina_citrus すいません、「9408」でした…w
ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-07-27 12:34:49
あいたった!
ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-07-27 12:35:37
入りますよー!
蓮霧(れんむ)は愛領@夏休み @renmu0309 2014-07-27 12:35:19
@nandina_citrus 部屋の中にテーブルがあるのでその上のガシャポンのカプセルの中身をみてみてください
ナンジュリツカ@(有)ギルベルト・警備員 @nandina_citrus 2014-07-27 12:37:31
ちょっwwww 開いてないwwwヘルプミー!!
ヌク @nukokkuma 2014-07-27 12:38:21
@conaki_pbw 全体を見たければ自宅待機。現場でリアルに体験したいならどこか行けるなら行ってみるって感じですかね。
まぁや @maaaya1011 2014-07-27 12:39:22
南京錠はずれたけども鍵があきません! pic.twitter.com/PWeQWqXFtQ
aotororo @aotororo 2014-07-27 12:42:35
そのでかい錠前の中にカギが入ってるとか
まぁや @maaaya1011 2014-07-27 12:42:51
南京錠の中に鍵ありました!これから入ります! pic.twitter.com/ADqte7vmU0
比嘉劉輝 @higa_ryuki 2014-07-27 12:44:46
(TLと生放送両方が、面白い登場を期待してワクワクが高まっている)
じゃがりこ@相互希望 @potatobou 2014-07-27 12:45:21
開いた!!
闇の隠居 @yamino_inkyo 2014-07-27 12:45:31
きたーーーー突入ーーーーー
子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-07-27 12:45:27
【速報】ソル突入
空つぶ @sora39ra 2014-07-27 12:45:34
3人か
※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント( @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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