3D小説「bell」本編

■佐倉みさき/7月26日/24時

2014/07/27 00:00 投稿

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  • bell本文07月26日
佐倉視点
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 丸一日、私はフローリングの上に転がっていたのだった。
 人間というのは意外と環境に対応するもので、私は両手両足をしばられ口にガムテープを貼られたまま身体をストレッチする方法を習得しつつあったけれど、とはいえ腕も足も可動範囲が極めて制限されているから全身の筋肉が強張って気持ちが悪い。これまで肩こりとは無縁の人生を送ってきたけれど、そうもいっていられなそうだ。
 サングラスは部屋の明かりもつけないまま、大きなテレビで長い時間古めかしいロボットアニメをみていた。でもそれもひと段落したのか、サングラスはソファから立ち上がって「コンビニいってくる」と呟いた。
 それは私に語りかけたというよりは、独り言に近いように聞こえた。サングラスは誘拐犯だというのに、その被害者にはほとんど無関心だった。彼はだいたいスナック菓子を食べていて、私には2度、コンビニのおにぎりとミネラルウォーターが与えられた。そのあいだは口のガムテープに加え、手の拘束も外されたから、警戒も薄いのかもしれない。
 がたん、と重たい音が聞こえて、サングラスが家を出たのだとわかった。暗い部屋を、つけっぱなしたままのテレビの光が照らしていた。
 手足を縛られている私は、立ち上がることもできない。とはいえこれはチャンスだ。
 奴がアニメをみながらしばしばいじっていたスマートフォンをテーブルの上に残したままだということには気づいていた。手が使えなくても、足が使えなくても、舌を伸ばせなくても、上手くやれば鼻の頭なんかでスマートフォンなら操作できるかもしれない。警察にコールしよう。思い切りうめき声を上げよう。それで助けを呼べるはずだ。
 私は全身に力を込めて、フローリングの上を転がる。無暗に散らかっているフローリングだ。スナック菓子の空袋があり、コンビニ弁当の空き容器があり、雑誌があり、携帯ゲーム機がある。私はそれらを押し潰して進む。そのまま全力でテーブルにぶつかった。
 私の膝丈ほどしかない、背の低いセンターテーブルだが、妙によい素材を使っているようで、当たった感触が重い。あまり揺れた様子もなかった。
 私はテーブルから少し距離を取り、またぶつかる。

 繰り返すと、テーブルの上から、軽いものが舞い落ちた。

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 ――ポエム?
 なんだかよくわからない。
 そんなものに構ってはいられなかった。
 私はスマートフォンが落下することを祈って、テーブルへの体当たりを繰り返す。
 直後。
 テーブルの反対側から、がん、と重たい音が鳴った。
 ――スマートフォン?
 落ちた、か?
 私は期待に胸を膨らませ、テーブルの反対側まで転がる。だが、そこにあったのは、私の求めていたものではなかった。
 それが目に入ったとたん、リアルな死の恐怖に、息が詰まった。ガムテープよりも確実に言葉を奪う。急速に身体が冷えて、皮膚が震える。
 フローリングの上に転がっていたのは、見間違えようもなく、拳銃だった。
 最悪のタイミングで、どこか――玄関の方から、鍵の開く音が聞こえた。
読者の反応

minion @minion_strife 2014-07-27 00:01:13
あっ、来たけどまだ to be continued がないw  


交響楽 @koukyoraku 2014-07-27 00:02:32
拳銃だー
 

おおば @hdjjkhkl 2014-07-27 00:13:04
「上手くやれば鼻の頭なんかでスマートフォンなら操作できるかもしれない」想像したらかわいいぞ  


蓮霧(れんむ)は愛領@夏休み @renmu0309 2014-07-27 00:01:27
新しい謎か  


むらつば @onigirings 2014-07-27 00:03:20
解析班はGoogleスプレッドシートに集合な  


闇の隠居 @yamino_inkyo 2014-07-27 00:01:59
これって少年ヒーローのメロディーにぴったり合いそう!  


いぬくん@bell 長崎支店 @kun_inu 2014-07-27 00:05:58
今やったけどちゃんと歌えるぞこれ!
 

kao @kao_aki 2014-07-27 00:01:41
電車の中で   みてたらいつの間にか充電が残り6%になってて危うく切れるところだった





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