たけまる のコメント

ジャニーズ問題に関して「エンガチョ発言」をしたという、経済同友会の新浪剛史代表幹事。
この名前には見覚えがある、と思って、とある本を引っ張り出して確認しました。
やっぱり。
戦時の日本軍が犯した様々な失敗について論じた名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)の新装カバーの裏表紙に、推薦者の一人としてデカデカと名前が出ていたのです(当時の肩書は、サントリーホールディングス社長)。
しかも「会社組織の経営に常に必要な“戒め”を学べる指南書です」という推薦文まで書いている。
一体、この本から何を学んだのでしょう?
単に「ヤバいと感じたら早々に撤退する」という「戦略」だけを身につけたのでしょうか?

この新装カバー表紙には「なぜ日本人は空気に左右されるのか?」という惹句が添えられています。
本編にも「主観的で『帰納的』な戦略策定ーー空気の支配」という章題があります。
本文より一部引用しますとーー
「日本軍の戦略策定は一定の原理や論理に基づくというよりは、多分に情緒や空気が支配する傾向がなきにしもあらずだった」(283ページ)
「事実を冷静に直視し、情報と戦略を重視するという米軍の組織学習を促進する行動様式に対して、日本軍はときとして事実よりも自らの頭のなかだけで描いた状況を前提に情報を軽視し、戦略合理性を確保できなかった」(328ページ)
「およそイノベーション(革新)は、異質なヒト、情報、偶然を取り込むところに始まる。官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。日本軍は、異端者を嫌った」(386ページ)

果たして新浪剛史代表幹事は、空気に左右されることなく、冷静に情報を分析し、官僚制に堕することのない判断に基いた発言をされたのでしょうか。
ちなみにこの新装カバー裏表紙には、「各界のリーダーが絶賛!」として、新浪氏以外にも本書を推薦する著名人の名前が列挙されていますが、その中には「東京都知事 小池百合子」の名前も。
むしろこれ、日本人の特質を「学んだ」上で、トップに立つにあたり、どのように立ち振る舞えば自らに火の粉がかからないか(ーーどうせ日本人はあの頃と変わっていないのはコロナ禍でも判明したし)、という「学び」を会得しやがったんだろうなあ、という気もします。

No.216 8ヶ月前

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