(ゆウゆ)のブロマガ

「羊と鋼の森」感想

2019/01/13 00:01 投稿

  • タグ:
  • 登録タグはありません
  • タグ:
  • 登録タグはありません
はてなに書こうかと思ったけどなんかめんどくさくなったのでこっちで。
自分は元々あんまり熱心な読書家って程熱心な読書家とか多読家って程でもないんですよね。そこまで多感な人間でもないので読んでもピンと来なかった話題作もたくさんあります。そんな私が久しぶりに「これは良いな」と思える本に出会えたので文章に残しておきます。
この作品は映画版の宣伝で初めて知ったんですけど、CMを見た瞬間「ピアノの調律師がテーマってだけで面白そう」と思ったので図書館で予約してかなり待ちました。かなり良かったので書籍で購入を考えてます。気に入った本は紙で欲しいタイプ。

お話としては田舎生まれで高校に入学するため一人暮らししている普通の高校生男子がある時ひょんなことから学校のピアノを調律する場面に立ち会ってしまい、その音の美しさに心を奪われたのをきっかけにピアノの調律師を志、そして実際に調律師になってしまうと言う話です。
全然知らなかったんですけど、ピアノの調律師って音大とか出てなくてもなれるものなんですね……。その辺は後程調べてみようかと思います。
私も一応ピアノは中学生くらいまで習ってたし今でも実家でピアノが眠っているはずなのですが、調律師さんが来ていたと言う記憶が一ミリもないです……。もしかしなくてもめちゃめちゃ酷いあり様になってそうでピアノが可哀想ですよね。なんとかしないとなあ。

ともあれ、調律師の学校を卒業した主人公は、晴れて自分が調律師の世界を目指したキッカケである板鳥と同じ職場で働くこととなります。
駆け出し調律師として先輩達(私は秋野さんがクーデレで好きです。ピアニストとしての自分の限界に気づいて夢を諦めたけどまだ調律師としてピアノに関わってるって言う設定だけで最高に萌える)に学びながら奮闘する主人公。この先輩達もそれぞれ仕事について悩むこともあれば秘められた過去もあってそれぞれ魅力的なのですが、しばらくは先輩達について回ることになります。
それというのも、調律師と言ってもただ音を合わせれば良いと言う訳ではなく(それだけでも十分凄いのではないかと思うのですが、そこまでは努力で誰でもできるらしい……ほんとか?)お客さんそれぞれ求めるピアノの音色が違うのでそれに答えなければならなかったり、ホールのピアノなるとまた勝手が違ったりと、その道は随分奥が深いようです。
主人公は自分にはいわゆる才能なんてないんじゃないかと悩んだりすることもあるのですが、素人には解らない細かな音の違いが解る時点でもう十分凄いよとか思ってしまいます。
自分はもともとこう言う働いてる人(特に良く知らない職業)のドキュメンタリーものみたいな話が凄く好きなんですよね。そう言う意味では「舟を編む」なんかもかなり面白かったです。あれはあれで「言葉」に対しての細かな拘りが出てて、読んでてワクワクしました。

読んでて良いなあと思ったシーンはたくさんあるのですが、まずは冒頭の、ピアノを奏でている時に森の匂いを感じているシーン。実際に森の匂いがしてくるようで思わず深呼吸をしてしまいそうになります。
土の匂い、木の匂い、風のにおい、雨のにおい、太陽のにおい……。優しいだけじゃなくて厳しさもある、爽やかなだけじゃない、どこか鬱蒼とした山のにおい。自分はそこまで自然豊かな所に生まれて育ったわけじゃないんですけど、何故かその情景が浮かんで来るのは人類のDNAに刻まれている的なアレなのでしょうか。
タイトルだけ読むと浅薄な私はピアノと森と何にも関係ないじゃん、と思ってしまいそうになりますが、ピアノは木と羊と鋼で出来ているんですね。ピアノの製造工程や原材料なんて考えたこともなかったけど、そう思うと「ピアノの森」で森の中にピアノがあったのも何だか自然なことのような気がしてきます。

あと凄く共感できたのが「ピアノが、どこかに溶けている美しいものを取り出して耳に届く形にできる奇跡だとしたら」と言う一節。個人的には、それはピアノだけじゃなくて、音楽ってだけじゃなくて、絵画や小説や彫刻や衣服、ダンスや歌ってことにも共通して言えることだと思うんですよね。人間が日々の生活で感じている美とか奇跡とか悲しみや苦しみ、喜びや幸せを誰かに届けようとして努力して生まれたものがそう言ったものなんだろうなあと思います。でもその媒介手段自体も、美しく思えてくるから不思議よなあと思う。ピカピカに磨かれたピアノも、精密に紡がれた文章も、舞台でスポットライトを浴びて歌って踊るアイドル達も、それ自体が美しいと思えるのは、世界のどこにでもある、それでいて奇跡みたいな美しさを宿しているからなんだよなあと改めて思いました。

あとは作中で板鳥さんが目標としている音を原民喜の表現を引用して「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」と表現しているんですが、この小説の文体がまさしくそんな感じがするのは私だけでしょうか。本当に不勉強で恥ずかしいのですが原民喜の文章を知らなかったので、宮下奈都さんの他の作品と合わせて読んでみたいと思います。
そして私は今猛烈に森に行きたい。今行ったら凍死しそうですね。登山グッズ欲しいなあ。
そしてピアノが弾きたいです。影響受けるの早すぎか。
私はピアノ習ってた頃はそんなに音楽が好きじゃなくてむしろ止めた後にハマってしまった感があってちょっと
もったいないですね。こんなに好きになると知っていたらもっと熱心に練習したかなあ。やはり小さい時から良いものを知るってことが肝心ですよね、なんて思ってみたり。
ともあれ、他の作品を読むのも楽しみです。また感想が書けるくらい感動できる作品に出会えるといいんですが。


コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事