基礎医学研究者 のコメント

>>307
たこちゃんさま
基礎医学研究者でございます。貴重な情報、ありがとうございます。私、進化学、医学生物学のことは多少解りますので、コメントさせていいただきました。自分はこの番組を見ていないのですが、たこちゃんさまの”違和感”は以下の理由でおそらく正しいのではないかと、私見では思います。

まず、進化(DNAやRNAなどの核酸レベルの進化)は、基本的には核酸の複製過程でコピーミス(変異が入る)ことにより生じます。コロナウイルスの場合もざっくりいってヒトと比較すると100万倍くらい変異が入りやすいことがわかっているので、複製過程で様々な変異が入ることが期待されます。このときに、最近話題になったデルタ株は、その該当領域をもったウイルスゲノム(核酸)がおそらくウイルスの生存に有利だった可能性があり(毒性とは何の相関もありません)、ウイルスの世代を経るごとに、だんだんとこの変異が選択されていったと考えられます。これは、ウイルスというミクロの集団ですが、進化学者ダーウィンのいう、正の淘汰圧(選択圧)が生じたということになるかと思います。ところで、実は変異というものは先ほどの機構でランダムに生じるのですが、大多数はどちらかというと生存に全然関係しない(中立)あるいはむしろ有害な場合が多く、特に有害の場合には負の淘汰圧(選択圧)がかかり、ミクロの集団からは排除されていきます。すなわち、どちらかというと、いろいろな進化実験がウイルスで行われる過程で何の影響も与えず残るか、あるいは消えていく変異というものが圧倒的に多いということでして、デルタ株のように残っていくほうは、よく我々が使う“進化した状態”というものに近いのかと思います(ウイルスでそれがすばやく表現されるのは、進化速度がものすごく速いからであります)。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の場合のデルタ株は一回集団中に固定されているはずなので、それが突如自殺していくような変異(有害な変異)状態になる、あるいは現在の変異にさらに有害な変異が入って都合よく集団から消えていくというのは、ちょっと想定しにくい、と思います。むしろ消えていったのは、ヒトのいろいろなレベルの免疫が強化されて(集団免疫を獲得して)、感染はするが排除されたりウイルスの複製が抑制されて薄まって消えていく、と考えた方が、これまでの進化生物学、および医学生物学的に考えるとシンプルな気が、私見では致します(だから、自分も「変だな~」と思う訳でございます。

いかがでしょうか?以上、御参考までに(m_ _m)

No.310 37ヶ月前

このコメントは以下の記事についています

継続入会すると1ヶ月分が無料です。 条件を読む

小林よしのりチャンネル

小林よしのりチャンネル

月額
¥550  (税込)
このチャンネルの詳細